American lemonade
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関東大会1回戦、岬ウルブスを倒した後
進さんが俺にロデオドライブの走法を教わりに来た。
自分でも馬鹿なことしたなとは思う。
今でも雲の上の人だってのに『進さんのMAXの力が見てみたい』そんな理由で自分の編み出した技の核を教えたんだから。
…それでも、後悔はしてない。
俺がそれより強くなればいいだけの事だ、って意気込んでるとこに
セナとモン太に会った。
次の第四試合で見れるであろう、進さんの完成版トライデントタックルについてセナに問えば
「どうせ勝たなきゃいけないなら、ホントのホントの強さの進さんに 勝ちたい…!」
なんて真剣な顔で答えるから、
すっかり男らしくなったセナに、決勝戦が楽しみになる。
「ああ、セナ。それでこそお前は『アイシールド21』だ…!」
「…んでもビミョーに怖くなってきたかも…」
「……」
「う~ん。カッコ良さ台無しMAX…にしてもさっきの試合すごかったぜ、陸!瞬殺だったな!」
「ホント!すごかったよ!ロデオドライブもグワッって感じがさらにグワワァアーッって感じになってて…!」
「何だそのグワワーって…。まぁ…、試合前にあんなこと言われちゃ俺もね、やる気出さないわけにはいかないって」
『…勝って、』
なまえのその言葉が、
試合が終わった今でもまだ、耳に残ってる。
普段…特に試合中なんかは周りの音なんて全然耳に入らないってのに
不思議だよな、ほんと。
「…なまえ?」
「それ以外ないだろ?」
「あはは、だよね」
「俺らはあの後大変だったけどな…」
「?何かあったのか?」
「あ~…鈴音がね、もうね、盛り上がっちゃって…」
「『やー!ロミオとジュリエットみたい!見た!?今の見た!?』つって大騒ぎよ!」
「……ロミオとジュリエットね…」
それ、悲劇のはずだけどな…。と言ったところでどっちも知らないだろうから、心の中だけで留める。
多分バルコニーのシーンだけで言ってるんだろうな…
なんて思ってる間にも『鈴音』についてどんどんと話が流れていくんだから、
なまえのメールからも察するに、相当そういう話が好きな奴なんだな…と改めて把握する。
「『なんであれで付き合ってないの?』ってもう忙しないのなんの!」
「僕らに聞かれても分かんないよって言ってももう全然聞いてくれないしね…ホント…」
「付き合ってないけどな」
「なんで……?」
「なんでだよ」
俺の言葉を聞いて反射の様にそう返してくる二人に、思わず視線を上に向ける。
なんで、か…。まぁ、周りからはそう思われても仕方ないのか…?
なまえのことは確かに特別だと思うし、それ以上の気持ちもあるような気がしてるけど、
『好き』だって言葉がしっくりこないせいか…
『彼女』って感覚に違和感があるからか…
「……なんでだろうな?」
それとも、ただ 二人で居られることを疑ってないのか
とか そこまで考えて、結局焦る必要なんかないんだろうと考えを止めた俺に セナは呆れた顔をした。
「…なまえと同じこと言ってる…」
「…それは俺の台詞だぞ、セナ」
「え?」
「なまえの焦ったときの態度、まるっきりセナと同じだからな」
「それは確かに」
「え?そ、そう…?」
俺の言葉にモン太が頷いて
改めて思い返したセナが、うーん…そうかも…。なんて呟けば、全員から笑いがこぼれる。
「そういや、なまえは?」
「どぶろく先生を看てるまもりお姉ちゃんの代わりに、王城戦のビデオ撮るって…」
「一緒に陸のとこ行こうぜ!って誘ったんだけどよ。な、セナ」
「うん。でも、『きっと また今度会えるから』って」
「…そうか」
セナのその言葉に
ちゃんと伝わってるんだな と感じて、つい笑みが溢れる。
「じゃあ、なまえに『またな』って伝えといてくれ」
ざわざわとし始めた空気に、もうすぐ試合が始まる気配を感じて セナへ伝言を預けて別れる。
スタンドへ出ればナイター用のライトがガッガッと音を立ててフィールドを照らした。
少し待たせるかもしれないけど、嘘はつかないからな。
絶対、会いに行く。
だから、少しだけ
待っててくれるだろ、なまえなら。
Balalaika-バラライカ-
【恋は焦らず】