American lemonade
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泥門と播戸の試合の歓声が、控室にまで響く。
アイシールドの仮面を取って
今日、やっと一人のアメリカンフットボール選手として試合に臨んだセナに
俺も負けてられないなと意気込んだ。
先週の泥門との試合は辛勝。
もう敵同士だと、セナも成長しているんだと分かっていたのに
どこかで認められなかった 俺の方が、ってプライドが セナに俺を追い越させた。
それでも、チームとして勝ったのは俺達 西部ワイルドガンマンズだ。
勝った奴が見ていいのは『次』だけ。
だから あの日、なまえが泣いていたのに、俺は見ないフリをするしかなかった。
泣かせた俺から、かけられる言葉なんて何もなかったから。
「連絡はない、か」
当然だ、敵だったんだから。ましてや今は、播戸との試合中。
メールなんて来てるはずない。
そう分かっていながら、確認した携帯をロッカーへ戻す。
今日は鉄馬さん抜きで王城を崩さなきゃなんないんだ、余裕かましてる場合じゃない。
必然的にラン中心のスタイルになるだろうし…俺の相手は進さんなんだ、
6年も待たせといて
またな、って先延ばしにするだけで
こんな時だけ連絡待ってるなんて、なっさけないぞ 俺。
しっかりしろ、とらしくない自分に気合いを入れる。
相手が誰だって関係ない。
「俺は、誰にも負けない」
その言葉も、今日に限っては奮い立たせるだけの言葉にしかならなかった。
結局、俺は一度も進さんを抜けないまま 西部は負け。
キッドさんは「鉄馬も居ないのによくやってくれたよ」なんて言ってくれたけど
自分の実力不足は、自分が一番よく分かってる。
進さんが雲の上の人だってのは 試合前から理解してたけど
それでも、一度も抜けずに「仕方がなかった」なんて俺は言えない。
完敗だったんだ、
悔しくないはずがない。
体は疲れてるはずなのに、脳内では研究に使えそうなビデオのリストアップが勝手に始まって
今日からまた関東大会に向けてやることが山積みだな、なんて
そんなことを思いながら戻った控室では
携帯の点滅する光が、メールの通知を伝えていた。
「…なまえ…か、」
『メール送るの、遅くなってごめんなさい。
王城さんとの決勝戦お疲れさまでした。
また、関東大会でりっくんに会いたいです』
「…なんで敬語なんだ…?」
そんな事を呟きながらもこのタイミングで送ってきたってことは 負けた俺になんて送るか、必死で考えたんだろうな…と思うと
その姿が容易に想像できて
思わず笑みがこぼれる。
関東大会で、か。
そうだ、次は負けない。
セナにも、進さんにも。
誰にも。
俺はまた、ここからだ。
ここからもっと
強くなる、誰にも負けないくらいに。
Gibson-ギブソン-
【決心】