American lemonade
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『きっとまた、会えますように』
りっくんから借りたハンカチに、そんなお願いをかけて
その『いつか』を待ってる間
私は、私のできることを精一杯、少しずつでもいいから頑張って
その『いつか』会えたときに、りっくんといろんな話ができるような
そんな私になっていられたらって
思ってはいたけど
蛭魔先輩の無茶苦茶な約束の勢いに乗せられて、夏休みの殆どを海外で過ごすどころか
野宿しながらアメリカを走って横断したりとか
ラスベガスでカジノへ行ったりとか、
普通じゃあり得ない体験をすることになって
無事に日本に戻ってこられたと思ったら
巨海高校へスパイしに行かされたり
アメリカで仲良くなった鈴音ちゃんにチアの衣装を着せられたり…
なんて、すごく流され気味だけど…それでも忙しなさすぎるくらいの毎日に
この調子ならりっくんと話すこと、話しきれないくらい いっぱいできそうだなぁ、なんて呑気に思いながら
次の対戦相手になる西部の 対 江戸前戦がちゃんと撮れているか、
歩きながらビデオを確認していたら、左からドンッとぶつかられて思わずビデオを抱え込んだ。
「っ…!!」
「あ痛た!」
「邪魔」
「なにあれ!!二人とも大丈夫!?」
持っていたビデオは落とさずにすんだけど、ぶつかられた勢いで 少し前を歩いてたまもりお姉ちゃんに思いきりぶつかってしまって
その反動で反対側に転んだ私は、立ち上がるのも忘れるくらい慌てて ビデオが壊れてないか確認する。
「なまえちゃん!大丈夫!?」
「あ、ご、ごめんねまもりお姉ちゃん!ビデオ、大丈夫だよ!」
「ビデオより、なまえちゃんが怪我してない?」
「私、は…」
「ふーん?男が女の子突き飛ばしといて『邪魔』か。情けないな、お前!」
「え……?」
まもりお姉ちゃんに言おうと思った「大丈夫」の言葉も
痛みとか、安心とかそういうのも
『なっさけないな、』
全部、その一言に奪われて消えていく。
だってその言い方は、
長い間、記憶の中でしか聞けない音だったから。
「ん?」
「「あーーー!!!」」
「陸…!?」
「セナ!」
待ち焦がれていた『いつか』は
想像していたよりもずっと早く、突然目の前に現れる。
「なになに?」
「知り合いか?」
「知り合いも何も、セナの兄貴だよ」
「何イィィイィィ!!?」
「いやいやいや」
「兄弟いたの!?」
「いや、一人っ子だけど…」
「!もしかして…陸っくん!?」
「『陸っくん』は勘弁してよ まも姉。もう子供じゃないんだからさ…」
そう言った彼は、昔いじめっ子からセナや私を助けてくれた彼そのままで、
本当に、りっくんで。
「…大丈夫か?なまえ」
そう言って、立ち上がるのを忘れたままの私に
手を差しのべてくれる彼はやっぱり昔のまま、優しくて
私の目には 誰よりも
特別に映った。
ざわつく胸は、とても静められそうにない。
Olympic-オリンピック-
【待ち焦がれた再会】