2.43清陰高校男子バレー部
名前変換
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「誰や?今の」
すれ違いざま、おれやのうて
おれの隣を歩くなまえに 挨拶をする男が居て眉を顰める。
「名前は知らんけど…いつも挨拶してくれる人」
「ほーーーん」
「…統でも気になるんやの」
分かりやすく気に入らんちゅう声色で返事したら、なまえはちょっこし困ったような顔をする。
困った顔もかわいいんやけど、なまえに非があるわけでもえんしなー
ってかおれでもってどういう意味や?と思いながら眉を開く。
「ほりゃ面白れーか面白くえんかなら面白くえんけど、まだ周りに付き合うてるって言うてえんしのぉ…。工業は女子少ないで、それくらいの夢は見せてやってもいいんやけど…」
「夢って大袈裟やの。ただ挨拶するだけやって」
「なまえは自分の価値を分かってえんな〜!工業の女子ってのはぁ、砂漠のオアシスみたいなもんなんやぞ?」
「ん~…?夢壊さんよう気ぃつけるわ…?」
ほんな発想になるとこが おれとちょい似てて
ほやで当然、工業の数少ない女子ってのを差し引いてもなまえはモテる。
さっきみたいな男もいくらでもおるで挨拶ぐらいで気にしてたらキリねぇんは分かってるし
ほんなことでなまえにグチグチ言うつもりもえん。
言うつもりはえんけど…
すんなりいったわけやないと思うとな~、なんて 内心では愚痴る。
普通なら特別な奴には特別な態度をとる。
おれかて越智やなまえには愚痴ったり弱みを見せることもある。
ほやけどなまえのほれは分かりづらくて本当に分け隔てのう感じたし
付き合うた今でもまだ『理想的な彼女』みたいな面が大半でからかう隙もえん。
告白した時だって二つ返事やなかったしのぉ…なんて思い返す。
『おれは好きやぞ、なまえんこと』
『……』
『おーい、なんか返事しろや』
『…そ、れは…友達て意味…?』
『ほーん?この流れでようそんたな言葉出いてきたなー』
『…てのは冗談で、』
『ほういうことにしといたるわ』
『あー…んと、』
『なんやその煮えきらん返事…まさか断る理由とか考えんよな!?』
『ほやないけど、統は人気者やで…』
『で?』
『…統が…私やえんとあかん理由が思いつかんっちゅうか…』
『ほんなことか!ビビらせんなや!』
『え~…』
『おれはお前の前やと“ただの三村統”になれる』
『?』
『福井の宝でも、福蜂の天才でも、何を背負うでもない。ただ、お前に好かれたいだけの三村統になれる。ほの意味が分かるか?』
『…私じゃ正確には分かったげれんと思う』
『ほういう分かったフリせんとこもいいと思うし、バレーばっかのおれが 一瞬でもバレーのこと忘れさせてくれる女に出会うたんやぞ。運命やと思わんけ?』
『…忘れていいん?』
『おれかてなぁーんも気にせんと休みたいことくらいあるわ。ほんな時、なまえが居ってくれたらいいやろなって思たんや』
『…うん。ほういうことなら隣に居らせてくれたら嬉しい』
『よっしゃ!これで堂々とベタベタできるでな』
ほういうこと言うて茶化したわりに、彼女にデレデレっちゅうんもあれやで
学校では『あの二人はどうなんやろな』くらいの距離感から崩してえんかったなーと今更ながらに気づいて一歩近寄る。
「?」
「ほういや堂々とベタベタしてえんかったなと思て」
「え~…何突然」
「嫌なんけ?」
「嫌やないよ。可愛いしの」
「…なんやフクザツやな~」
おれを捕まえて『可愛い』っちゅうんはなまえくらいなもんやと思えば、悪ないんかもしれんけど…といい方に捉えてみるも結局 元の距離に戻ってう~んと唸る。
手でも繋いでやるかと思ってたんが手持ち無沙汰になったでポケットに突っ込めば、今度はなまえが一歩寄ってきて
何かと思えば 控えめに腕を組んできた。
「うわ、ひっで可愛いことすんな」
「…腕組む方が統のイメージ崩さんかなと思うただけやで…茶化すんやったらやめる、」
「待てって!茶化してえんやろ!?素や!今のは素やって! !」
「別に…」
「いや、マジやって!ひっで可愛いと思たんやって!!」
「…やっぱやめる、」
必死なって声が大きなるおれに反して、小そう呟いて離れようとするなまえの手を慌てて上から握る。
「やめんなや」
照れんのも、腕組むなんてのも、目に見えて『特別感』を出すんは珍しいで
ニヤけそうになる顔を必死で引き締めてなまえを止める。
「おれはこのままがいいで頼むって。の?」
「…うん」
「え~照れてんのひっで可愛いんやけど何なんや突然ー」
「〜私だって流石にスキンシップとかは慣れてえんで照れるし…」
まだからかわれてると思てるんか、ちょい拗ねたような口調がまた可愛くて口元が緩む。
今のおれなら他の男がなまえに挨拶してきても許せるわ。
まぁ、この状態でほんなことしてくる空気の読めんやつはそうそう居んやろうけど。
「こうやって見せつけて歩くんも悪ないな」
「統のファンが見たら泣くんでねぇの?」
「なまえのファンも泣くやろ」
「いや、私 ファンとか居んし」
「話しかけてくる男は全員お前のファンみたいなもんやぞ」
「また大袈裟やの…」
「ガチやって」
「う〜ん…ほやったら、申し訳ないけど泣いてもらうしかえんのぉ。統以上の人、居んし」
「!まぁ、福井の宝より上はそうそう居んやろな〜」
なんて、なまえの言葉を聞いてニヤけかけた口元を誤魔化すように調子のいいことを言うても
内心は嬉しくて仕方えんとか、こんな惚気 越知くらいにしか言えん。
人の気も知らんで、呑気に「大事にしなのー」と相槌うつなまえにたまらんなってキスをした。
いいやろ、今日はこれくらいしても。
思てたより
おれはなまえに好かれてたみたいやしの。
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