2.43清陰高校男子バレー部
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この福峰工業高校で 女子は手で数えられるくらいしか居んけど
ほの中でも長い髪を揺らして走るその後ろ姿は
おれにとっては さらに特別で
ほんの少しでもいいで、振り向いて欲しい存在や。
「なまえ先輩っ!」
「!あー、工兵くん」
「ど、どしたんすか?ほんな、慌てて…」
おれの声に振り向いて、名前を呼んでくれた先輩にきゅんとして思わずどもる。
ただでさえ先輩と話すのに緊張して回らん口が余計たどたどしなってかっこ悪…と内心うなだれながらも
なかなか話せる機会のない先輩と話せるんが嬉しくて、先輩を見つめた。
「バイト先からできるだけ早う来て欲しいって電話あって」
「え、ほやけどこの時間バスて…」
「ほうー。走ったら電車にはギリ間に合うかなーてとこ。ほういうことやで、またの!」
「あっ!あ、あの!おれ!自転車出しますよ!?」
「えっ、あ〜助かるけど、部活あるやろ?統に怒られるで、気にせんと部活出やー」
「駅なんて一瞬っす!すぐ戻れば大丈夫っす!!」
「ほやけど…」
「急ぐんですよね!?玄関で待っててください!自転車すぐ取ってくるんで!」
後でどんだけ怒られたとしても、こんなチャンス絶対逃せるわけえん!と思えば不思議と身体は勝手に動き出して 階段を駆け下りてた。
だって玄関で待ってるなまえ先輩を拾えば、二人乗り間違いなしやぞ!
ほんな付き合ってる奴らがやるみたいなことを、なまえ先輩とできる日がくるなんて思わんやろ!
寧ろこれで学校におれらが付き合うてるとかいう噂流れて、そのまま…とか、
なんて脳内では盛り上がりっぱなしやったのに
「工兵くん本当にありがとのー!今度何かお礼しなねー」
「えっ、いや、これくらい、別に…!」
『しっかり掴まっててくださいよー! 』と、勢いが良かったんはそこまで。
実際、控えめに自分の服を掴まれた瞬間から死ぬほど緊張してもて、
真後ろからゆっくりと大きめにかけられる声への返事も
途切れ途切れになるくらい、必死に自転車漕ぐしかできんくて。
「こんな必死になってくれてんのに、せんわけにいかんやろー?」
ほれは緊張を誤魔化すためで、とは言えんけど
「…ほ、ほやったら今度…新人戦あるんで、ソレだけでいいんで、応援、とか…っ」
顔見てたら、断られるん怖くて冗談ぽくすら言えんその言葉を 後ろに聞こえてるか怪しいくらいの声で言うてみる。
統先輩から『1回行ったらきりないで、どこの部活の応援もいかんようにしてるんやと』って聞いてたで
今まで1回も本人に言うたことなかったんやけど
今なら、断られたとしても反応見えんし、冗談やって誤魔化せるし!
そう思て、なまえ先輩の反応を待つ。
「んー…いつ?」
「来月の連休の日曜ですッ!」
「来月かー……うん、分かった。特別やよ?」
「えっ!まじっすか!?嘘やないですよね!?からかってるとかやのうて!?」
「本当やよ。ほやけど折角行くなら勝ってるとこ見たいで頑張ってやー?」
「~~っ絶っっっ対勝ちまぁす!!!!!」
試合でもこんな大声出したことないんでねぇかってくらいの大声で 勝利宣言して
ほれでも溢れそうな気持ちを足に向けたら
これ以上は出んと思てた自転車がさらにスピードをあげる。
「今から気合い入れ過ぎてガス欠ならんでよー?」
「平気っす!!なまえさんが見に来てくれると思えばいつでもアゲれるんで!! 」
「調子いいの~」
「本当ですって!!」
「も~工兵くんはかわいいのー」
可愛い、は喜んでいいんか複雑やけど
いつもは統先輩たちと一緒に居ることの方が多いし
おれがどもったり、きょどったりしてまうで
こんな風に話せたんは初めてなんやないか!?て気付いたらやっぱ嬉しさしかえん。
「ほやけど新人戦てことは統とか出んのやよねー?」
「ほ、ほーです!おれが、一応チームキャプテンで…!」
「え~すごいのー!」
「へ、へへ…」
「ほやけど統、自分が出な負けたら罰ゲームとか言いそうやのー」
「うっ…ありそう…」
「ほしたら罰ゲームだけあるんも可哀想やし、勝ったら私がご褒美あげよかな」
「えっ!?」
「試合見に行くだけっていうのもあれやし、特別」
「うぅ~…絶対勝ちます…!」
「泣いとる!?」
後ろから、よしよーしと頭をなでるその手が
夢のようで
もしこれが夢なんやったら一生覚めんでくれ!!と叫びたくなった。
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