2.43清陰高校男子バレー部
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みょうじのことは正直あんま好きやのうて
デレデレする工兵を見ながら おれはみょうじを好きになることは絶対ないやろな、と思てた。
理由は、媚びるような女子らしさや陽キャ感に圧倒されたせいもあるし
どこに行ってもちやほやされとることやとか、色んな部活に顔出してるて話も聞くで別段いいイメージがねぇ。
実際バレー部にもたまに顔を出しに来ては工兵を弄って帰っていく。
みょうじが何をしたいんかがおれには よう分からんっちゅーのも、好きになれんと思う要因のひとつなんやと思う。
「あんま工兵に夢見せんなや」
自主練中、ベンチに座ってちょいちょい声援を送るみょうじに
自分は手に持ったバインダーから目ぇ離さんでそう言うた。
おれらの学年はいいとしても、工兵は単純やしマネージャーとか彼女に夢見ててチョロいでの…なんて心配からくる発言ではあったんやけど
感じは…まぁ、悪かったと思う。
ほやけどおれは統みたいに愛想いいわけでもえんし、他の奴らみたいにみょうじに好かれたいわけでもえんし…と
ほんな理由を脳内に並べて、女子に釘刺すんが気まずい気持ちを誤魔化したわけやが
みょうじは特に気にした様子もなくおれに向かって話始める。
「可愛がられとるんやのー工兵くん。分かるわ〜ザ・後輩て感じで可愛いもんのぉ。つい構いたなる愛嬌もあるしなー。ほやけど私の前やと緊張してたどたどしくなるんがまた可愛いくての~」
「……ガチならガチで構わんけど、それなら他所でやってくれや」
「えーガチでねぇよー?」
「………」
ほしたらそのベタ褒めはなんやっちゅーんじゃ、と内心悪態をつく。
今までの良いとはいえん態度で 今更隠す必要もねぇやろけど…
一応、統が呼んだ手前あんま邪険にするわけにもいかんしやりずれぇな…とそこで初めてみょうじを横目で見れば思い切り視線が合うて驚いた。
「工兵くんは散歩中に会う大型犬て感じ。するやろー?」
「…」
思い切りのいい笑顔に それは思わんくもねぇわ、と思ても
視線をすぐ逸らして、それを誤魔化すようにチラチラとこっちの様子を伺う工兵に活を飛ばす。
ほれでも視線が外れる気がせんでまた横目で様子を伺うとニヤニヤしていて思わず嫌な顔をした。
「なんやノリ悪いのー?ヤキモチけ?」
「はぁ!?んなワケねぇやろ!?」
「冗談やってー。越智も可愛いな〜」
「あ!?気色悪いこと言うなっちゅーんじゃ!可愛うねぇわ!」
「えー?可愛いやろー?素直やのうて、ちょっと捻た感じなー」
「それのどこが可愛いんじゃ…」
「私からすると可愛いんやって」
「そうやって誰でも褒め倒してその気にさしてチヤホヤさせとんのけ?とんだ性悪女やな」
「お〜、意外と気強いんやな〜?仲間思いで面倒見もいいし、越智っていい男やったんやなー」
「あ〜〜やめろっちゅうとるやろが!」
調子が狂うこの感じは少しだけ、統と話す時に似てるかもしれんと
変な感情を抑え込むように思考の方を動かしたんが間違いやった。
そう感じてもたせいで『ノリ』が掴めてもて 遠慮のないツッコミを入れてしまう。
「ま、越智の言うことは間違ってえんよー。チヤホヤされるんは得なこと多いで気分もいいしなー」
「おい、ひっで性悪女の発言やぞ今のは!」
「男子も喜んでるしいいんでない?可愛いと思うとるよ?」
「アホやと思うとるの間違いやないんけ…」
「越智はやっぱ捻くれてんのぉ〜」
「悪かったな。どうせおれは捻くれ者じゃ」
「悪ないて。ほれはほれで可愛いっちゅーたやろ〜?」
「本気で言ってたんけ!?お前の守備範囲おかしいぞ…」
「私くらいになると大抵の男は可愛いんやって!ちなみに越智は警戒心の強い飼い猫って感じで、今ちょっこしおやつくれるんやったら家におるのくらいは許したってもええんやないか?ってくらいのなつき具合やと思うんやけど。どや?!」
「……」
その独特のノリに、性悪女やったとしても憎みきれん所があるんは分かったけど
なんなんやその絶妙に的確な距離感の掴み具合は…うまいとか通り越して怖ぇーわ!
ほりゃおれだってお世辞でも女子に褒められたら嬉しいくらいの感情は持ち合わせとるで
こんだけ割り切られたらそんな悪い奴でもねぇんかと思うやろ。
「黙ったとこ見ると当たりやなー」
「!ちが…っ」
「なんやー?えらい盛り上がってんなー」
「統!?ちゃうぞ、別に…!」
「今ちょーーっとだけ気ぃ許されたとこやで、そのうち撫で回せるくらいの仲になるんが目標やな!」
「はぁ!?おれはほんなん絶対ごめんやぞ!」
「ちなみに越智はなんやったんや?」
「警戒心の強い飼い猫」
「あ~みょうじにはツンケンしてるで確かになー。ほうなると飼い主はおれやな!」
「おい!!誰が飼い主やってか!?」
ほうやって 気づけばおれを振り回す二人のペースに乗せられてる自分がおって
それがあたかも自然な流れやと感じさせられるんは、どっちにも影響力のわりに嫌味がねぇからか…。
こうなったら諦めるっちゅーか割り切るしかねぇんはもう経験済やで
気は乗らんけど、とりあえず今唯一気になってたことを口にした。
「ほういう統は何やったんや?」
「「イルカ」」
「あー…」
イルカが猫を飼う
ほんな場面をつい想像して口角が上がるころには、みょうじを嫌いとは思えんくなってるで世の中ってのは分からん。
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