シャドウバース
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「誕生日、何がいいの?」
ふいに聞かれたその言葉に返せないでいると
もうすぐじゃない、と返事を促されて笑顔を返す。
「いやぁ、はじめて聞かれたから」
「どうせなら必要な物の方がいいでしょ」
知り合ってから それなりの付き合いだけど
これまで手元に残るような物を貰ったことはなかったし、こんな風に要望を聞かれることもなかったから
付き合う実感がこんなところでも感じられるなんて思ってもみなかったなぁと、プレゼントそっちのけで嬉しくなる。
サプライズなんて程遠い、けれど効率・実用性を重視するなまえらしいなぁ、なんて考えていたらひと睨みされる。
「聞いたことに簡潔に答えてもらえる?」
「あはは…。んー…あ、そうだ!手を繋いでみたいな」
「…真面目に聞いてるんだけど」
「大真面目だよ」
「……」
形に残る物もいいけど、僕がなまえに望むのは大抵形のないもので
外ではプロプレイヤー同士として、仕事に支障のないよう振る舞う僕たちに手を繋いで歩くような機会はなかったから
言葉通り真面目に考えた結果なんだけど…
なまえは 絶対にふざけてるでしょ、といった面持ちでソファーに座る僕を見た。
「そんなのいつでもいいじゃない。欲しい物を聞いてるの」
「え?今繋いでくれるの?」
「……」
さっと手を差し出すと、呆れた顔から嫌そうな顔に。
諦めたように隣へ腰を降ろしながら 自分の失言に対するため息をひとつついて、それでも結局 僕の手をとってくれるなまえに笑ってしまった。
「…初めてだね、ちゃんと手を繋ぐの」
「いちいちそういうこと言わなくていいから」
「照れてる?」
「…」
「わ、待って待って!離そうとしないでよ~」
「だったら黙って考えなさいよ」
「ふふ、可愛いなあ」
「聞こえないの?黙りなさいって言ったのよ」
「ごめんごめん。ついね、緊張しちゃって」
「緊張?誰が」
「僕が」
「……」
「あ、信じてないね?本当に緊張してるんだよ。これでも」
「そう、それは驚きね。本当の話なら」
「ね、自分でも驚いてるよ」
エスコートとして手をとることくらいはあったから
そんなに変わるものでもないだろうと僕自身も思っていたのに。
それが少し、ドキドキしているなんて
驚いたんだ、本当に。
でもこれはきっと実感からきてるものなんだろう。
「本当に…僕を選んでくれたんだね」
「……」
握った手の、指を絡めて
愛おしいなと、そう思う。
「ね、またこうしてくれる?」
「…家の中だけにして」
「十分だよ」
「…結局、プレゼントの候補は?」
「んー…僕はなまえが一緒に居てくれるなら、それだけでいいみたいだ」
「またそうやってふざける」
「本心だよ。それに手がかからなくていいと思わない?」
「はいはい、そうね」
「なんなら僕が何もかも全部やってあげたいくらいだよ」
「冗談やめて」
「え、かなり本気だよ?」
「…冗談はそのふざけた態度だけにして」
「残念だなぁ…」
僕が君に望むもの
それはきっとこれからも、形のないものなんだろうな。
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