折り重なる
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「あがっていけば?コーヒーくらい出すわよ」
なまえの言葉に 僕は大きな花束を抱えたまま「いいの?」と声をあげた。
彼女のファンが送ったそれはとても気合が入っていて、他の花と合わせると とてもなまえ一人では抱えきれない量になってはいたけど
だからといって部屋に入れてくれるのは珍しいなぁ…と驚いた。
プロポーズをしたからといって 付き合ったわけでもないし
今まで通り、プロプレイヤーとしての活動の邪魔にならないことが前提の関係に変わりはないから。
「今日は夕方には帰るよ」
花束をシャワールームに置いて、
飲み物を準備してくれているなまえへカウンター越しにそう声をかける。
「どうぞ。ご自由に」
「…帰ったらタクマが待っててくれるのは嬉しいんだけど、なまえと離れるのは寂しいなあ」
「……」
「そうだ、3人で同じ家に住むっていうのはどう?」
「ふざけてるの?」
「僕は至って本気だよ」
「でしょうね。お断りよ」
「それは残念」
会話の間、背を向けたままのなまえは
きっとまた呆れた顔をしているのだろうと 見なくても分かる。
なまえとこんな風に過ごすのも幸せだけど
最近、一緒に夕食をとってくれるようになったタクマを思うと…どちらの時間も代え難いので本当に悩ましい、
そんなことを考えながら先にテーブルにつくと
そこには白い薔薇がガラス皿で浮き花のように飾られていて…といっても、もう端がくしゃりと丸まって枯れている様子に
なまえにしては珍しいな、と不思議に思って
コーヒーを持ってきてくれた彼女に問いかける。
「この薔薇、もしかして僕が持ってきたやつかな?」
「……そうだけど」
「枯れるまで大切に飾ってくれたんだね。嬉しいな」
「別に…捨てづらかっただけよ」
「なまえは枯れた白いバラの花言葉って 、知ってる?」
「何が言いたいのよ」
「それは知ってた顔だね。これが僕への『答え』だったら嬉しいところだけど…」
「……」
「…『生涯を誓う』…僕にとって これ以上に嬉しい答えはないね」
沈黙を肯定と捉えて微笑む。
わざわざ僕に見せてくれるために今日家に入れてくれたのかな、と思うと愛しいばかりだ。
「…あそこまで言われて濁した返事じゃ不義理だと思っただけよ」
「僕はあれでも十分満足だったよ?」
「同じ失敗は二度したくない主義なの」
「?」
「…シャドバの次になら、私はきっとあなたを選ぶ」
「!」
「ただし、本当に何年先になるかなんて分からないから。死ぬ直前でも文句は受け付けないわよ」
「勿論、構わないよ。死ぬまで君の側に居られるってことだしね」
僕がそれで構わないのは本心だけど
それがなまえの照れ隠しだっていうのも分かるから、そんなに遠くない未来なのかもしれないなぁ…なんて思うと嬉しくなる。
思わず緩んだ口元が、なかなか収まりそうもなくて
手で隠したまま呟いた。
「なまえは本当に僕を幸せにするのが上手いなぁ」
「……分かってると思うけど、外でそういう発言控えなさいよね」
「んー、その点は心配いらないんじゃないかな。僕がなまえに好意的なのは今更だし、ある程度の言動は誰も気にとめないと思うよ?」
「…今のがある程度に入るとでも言うの?冗談でしょ?」
「さぁ、どうだろうね?審議なら今度 シロウくんにでも聞いてみたらいいんじゃないかな」
「…そんなこと聞けるわけないでしょう…」
「あはは」
きっと、周りは今更だって笑うだろう。
誰より僕自身がそう感じているし。
「笑い事じゃないんだけど…?」
呆れられても叱られても、当然のように君の隣に居るだろうって感覚を疑ったこともなかったから。
それでも僕はまだこれから、
「大丈夫だよ」
「その自信どこからくるのよ……」
想っていい理由をくれた君を、もっと
好きになる
だから、君とふたりで暮らすのは将来の楽しみにとっておくことにするよ。
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