折り重なる
名前変換
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「……」
スマホのメッセージを確認して、眉をひそめる。
送ってきた相手は
中学の頃から相も変わらず『自由』だ。
こちらまで気が緩んでしまいそうなくらいの
底抜けに人の良さそうな笑顔で
馴れ馴れしく、でも とても嬉しそうに
「なまえ」
私の名前を呼ぶせいで
昔から、彼の願い事を断れた試しがない。
「ごめんね、急に。お詫びの印」
「…いいわよ、別に。今に始まったことじゃないもの」
「ふふ」
「何がおかしいのかしら」
「いやあ、なまえ相手だとつい わがまま言っちゃうんだよね」
「…自覚がある分たちが悪いのよね」
お詫びなんて言いながら 誰にでも差し出すその花を受け取るのも
それをこうして髪飾りにするのも、もう何度目かなんて覚えていない。
「あれ、今日は僕の花を飾ってくれるの?」
「今日はまだファンに貰っていないから」
「…いいよね、そのファンサービス。花を挿してくれている間のなまえは 僕のモノだって気がして嬉しくなるよ」
「ファンに喜ばれているのは知っているけど…そんなこと考えているのは あなただけだと思うわ」
「そんなことないよ」
「どうだか」
「誰のものでもない、手の届くはずもない君が、自分の差し出したものを身に纏ってバトルをしてくれる…それに優越感を感じない人っているのかな?僕は存在しないと思うよ」
「…あなたいつもそんなこと思ってたの?」
「はは、バレちゃった」
「……」
隠す気なんて、ないくせに。
そう思いつつ じとっとした視線を向ければ、また人の良さそうな笑顔で微笑む。
いつも、そうやって
もう出会って 何年も経つのに
様々な言葉で 好意を添えてくる。
それが少しだけ怖いと言ったら
あなたはどんな顔をするかしら。
「あ、そうだ。バトルが終わったら今日のお詫びに美味しい食事でもどう?」
「珍しいわね。弟は?」
「う~ん…最近は少し早めに帰ってきてくれるようになったんだけど、一緒に食べようとすると逃げられちゃうんだよね。タクマにはちゃんと食べてもらいたいんだけど…」
「あなたが食事中もずっと話しかけるからでしょう」
「はは、お見通しだね」
「お見通しも何も大抵そうじゃない」
私のその言葉に、「タクマとなまえにだけだよ」と少し静かに答えられると私は何も返せなくなる。
その括りから、どうやったら抜け出せるのか
いくら考えても答えがでない。
「やっぱり一人の食事は寂しいからさ。行こうよなまえ」
「…断っても無駄なんでしょう」
「うん、僕が君と食事に行きたいからね」
いつまで あなたはそうして
「あなたって どうしていつもそうなのかしら…もう少し理性的な理由を用意できないの?」
「難しいかな。本心でしかないからね」
「はぁ……このバトルであなたが勝てたらね」
いつまで 私はこうして
「なまえも大体『それ』だよね。僕としては両方叶って嬉しいけど」
「これ以外じゃあなたが引かないからでしょう?しかも当然勝つ気でいる事に腹が立つわね。削り倒すわ」
「引かないよ。こういう時の僕が強いのはなまえならよく知ってると思うけど?」
「勝てないわけじゃないことを知ってるわ」
「はは、強気だなあ」
いつまで
この関係で、二人 同じ場所に立っていられるのか。
なんて、私がそれを憂うのはおかしいのよね。
手を伸ばす資格を棄ててしまったことに後悔はしていない。
それでも、
あなたの願いにはどうしても
甘くなる
これが、後悔でも贖罪でも恋心でもないとしたなら一体何になるのかしら。