青島カズヤ連載
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「ずっと気ぃ張ってたんだもんな…」
そう呟きながら、寝てるなまえの 熱を持った頭を撫でる。
ディテクター事件も落ち着いて、やっと帰国できると思ってたとこにミゼルが現れて…
また襲撃先だの占拠先だのを走り回って
やっと1日、日本で、しかも家に帰れるとなりゃ気も抜ける。
ただでさえ海外生活だし、世界はヤバいし、俺は頼りにならねーどころか気を張る一番の原因になってるし…
メッセージでやりとりし始めてからは、余計無理してる感じだった。
自分から近くに寄ってきたり、話しかけようとしてみたり…
俺から声をかけるとどうしても固まっちまうから、なまえのタイミングに合わせるしかなくて
それでもなまえが早く慣れたい、頑張りたいってそんなことを送ってきたのに舞い上がって
「そんな急に無理すんな」って言いながらも結局俺はその無理に合わせただけだった。
今までずっと克服しようなんて素振りみせなかったのに
相手が俺だから、ここまで必死になってくれてんのかもって
また呑気にそんなことを思ってた。
俺がもっと、気をつけてやんなきゃいけなかったのに。
「…、…」
「!悪い、起こしちまった」
薄っすらと開いたかと思った目はまたすぐに閉じて
なまえがぽつりと、俺の名前を口にした。
直接呼ばれるのは久しぶりで 嬉しいと同時に、心臓が掴まれたみてーに苦しいのは罪悪感か。
「…大丈夫か?」
「…ん、」
「……」
目を閉じたまま、呼吸の合間に短く応える様子を見て
大丈夫じゃねーのは分かりきってるけど、今の俺にはそれしか言えない。
自分のせいだとこぼせば、またなまえの負担になるだろうし
側にいたくても 今の俺じゃあ 余計 気疲れさせるだけ。
どれだけ心配でも、結局 側にいないのが一番いいって……分かっては、いるから
「皆には言っとくから ゆっくり休めよ」
じゃあ、俺行くから…と立ち上がった一瞬、ゆるい力で服を引かれて部屋を出ようとした足が止まる。
手はすぐ離れたけど
無視してなんか 行けるはずがない。
「……泣くなよ。熱 あがるだろ」
振り返って、予想通り 声も出さずに泣いてるなまえに
胸から全身へ痺れるみたいに広がる痛みに、どうにかなりそうだ って思いながらベッドのそばにしゃがみこんで
気の利いた言葉ひとつ出てこねー自分が嫌になる。
「…ご、め、」
「大丈夫だって!えーっと、ほら、今なら郷田とか仙道も呼べば来るだろうし なんとかなるって」
正直 何を謝ろうとしてんのか全然分かんなくて
多分、そういうことじゃねー気もすんだけど そんなことしか言えなくて
案の定 首を横に振られるから、今の状況的に他に何かあるか…?泣いてること?それともアミとなんか約束でもしてたとか…?と必死で考える。
でもこの感じ、久々だ。中学入ってからは疲れて熱出すこともなかったし。
前はどうやって泣き止ませてたっけ、なんて考えながら いくつか声をかけても当たらなくて頭を抱える。
「とにかくこっちは気にしなくていいから、お前はちゃんと休めよ?」
「…」
「…マシになってるかどうか、あとで連絡するからな!」
なかば諦めて、それでも心配で口にした最後の言葉で やっと小さく首を縦に振ったなまえを見て驚く。
この状況でまさか俺のことだとは思わなくて
そりゃ昔から熱出した時は帰ろうとすると大抵泣いて引き止められたけど、弱ってる時のそういうアレだろうし…
今は熱で余裕ねーし、泣いてるし、まともに俺の方を見てないから、だから 話しかけても、側にいても平気なだけで、それだけで、
今 期待したら後でキツいって、分かってる
分かってるけど、
「…余裕あったら、様子も見に来るし」
「うん、」
確認して、安心しちまう。
俺でいいんだって、また 自惚れちまう。
今なら、前みたいにずっと側にいられるんじゃねぇかって
途端に離れがたくなる自分は 単純でどうしようもない。
でも、やっぱ、
どうしようもなく
嬉しかったんだ。