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「アンタ達、付き合ったんじゃなかったの?」
「……」
相変わらず…というより更に俺に頼ろうとしなくなったなまえを
何とも言えない気持ちで眺めてるだけの俺が
アミの問いかけに自信満々で返せる程の余裕があるはずもなく、とりあえず無言で返す。
付き合ってる…はずだ。
そりゃあ『付き合ってくれ』って言ったわけじゃねーよ?
けど、俺のものでいいって…それは、そういうことだろ。
実際 なまえから話を聞いたアミにはそう伝わってるわけだし、誤解とかはない…と思いてーけど…
付き合ったら普通もっとこう…甘えたりするもんじゃねーの?
大丈夫かって声かけても大丈夫ってそればっかで、何か気ぃ遣ってる感じもするし…分かんねぇなぁ…と思って逆にアミに問いかける。
「…何か言ってたか?」
「…そうね…『カズヤくんはそこまで私のこと好きなわけじゃないと思うけど…』とか?」
「…はぁあ?!?」
「どこをどう見てそう思うのか不思議よね。こんなに分かりやすいのに」
「それっ…なんで…っ!」
「さぁ?本人に聞いたら?付き合ってるんでしょ?」
「っ…!」
そう言って去っていくアミの背中に、そんなもんどう聞けっていうんだよ…!と思いながら途方に暮れる。
だいたい、そこまで好きなわけじゃ…って、なんでそんなことになってんだ?!
そんな態度…………そこまで悪かったか!?と照れ隠しでやっちまってた素っ気ない返事や態度に後悔する。
身に覚えがあるだけになんとも言えねー気持ちにはなったが
そんな風に思ってても それでも俺でいいって、なまえは思ってくれたのかと思うと 大事にしねーとなと思う。
とにかく、これからそういう態度はできるだけとらないようにして…あと、できるだけ優しく……と思ったはずだったのに
「大丈夫だよ?」
「、…お前、最近そればっかだよな」
「え?…そう かな」
「そうだろ」
「…でも、あの…がんばるので、大丈夫」
「……俺が大丈夫じゃねーんだよ」
「……?」
「いい。どうせ分かんねーだろうし」
「っ…ご、ごめんね…?」
「別に…好きにすりゃいいけどさ」
「、………」
俺の心配は空回りするばっかで、何かうまくいかなくて。
そんな風に…喧嘩…でもなくて、怒ったつもりでもなくて
カッコ悪ぃけど、だたちょっと拗ねただけだったってのに…
翌日に熱を出すなよ!熱を!!
絶対俺のせいだよな!?罪悪感で死にたくなるじゃねーか!!
朝はギリギリだったから、ろくに話もできずに出てきたけど…
こんなことなら遅刻してでも話してくるべきだった…!
授業何も入ってこねぇ…何でこうなるんだよ…
「思ってることを素直に言わないから以外ある?」
「それは…」
「ま、なまえもそうだけど…あの子は聞けば答えるでしょ?」
「……」
「聞いてないのね」
「…」
「その調子じゃこの先 続かないんじゃない?」
「っ…それは…!…無理、」
アミの言葉で『別れる』って可能性が頭にちらつくと
それだけは、もう 絶対に無理だって思う。
「だったら お互いの考えをしっかり話すことね」とアミに釘を刺されれば、その通り過ぎて何を言えるわけもなく
お互いの考えって言ってもなぁ…と、考えてはみる。
なまえの考えはよく分かんねぇけど…
俺は、もっと頼ってくれていいし、甘えてくれていいし
『男子とも挨拶できるくらいにはなりたい』って、なまえの気持ちは尊重してぇけど、無理はして欲しくねーっていうか…
寧ろ他の男となんか一生話さなくていいと思ってるし
心配だし、守ってやりたいし、ずっと…好きだったし、
って、言えねぇだろ こんなこと…!
いやでも そのせいで好かれてないとか変な勘違いしてんだから…あ〜どうすっかなぁ……
…とりあえずなまえの考え聞いてからにするか…なんて、結局先延ばしにして放課後すぐなまえの家へ向かう。
「大丈夫か?」
「カズヤくん……昨日、ごめんね、」
「、」
第一声がそれで、あぁ、やっぱり、俺のせいだった。と思えばぐっと胸の辺りは痛むし
熱出すほど思い悩ませた原因が自分とかマジでダサすぎるし
辛そうななまえを目の前にしたら、なまえの考えを聞いてからとか、照れとか格好とか気にする余裕なんかなくなる。
「…俺こそ、悪い。別に怒ったわけじゃねーし、お前だって悪くねーんだから謝んなくていいって」
「…でも…考えたけど、分からなくて…何か、間違えたのかもって、」
「いいから!〜頼られたかっただけなんだって。マジで気にすんな」
「…そう、なの…?」
「そうだよ。だから…もっと甘えたっていいんだからな」
「……じゃあ…手、かしてほしい」
「?」
そう言われて、寝てるなまえの目の前に手を置けば 両手で抱え込んで顔を擦り寄せる。
それが死ぬほど可愛いと思っても、触れる手と頬の…普段とは真逆の熱さがこのままじゃだめなんだって思い直させる。
「……お前さ、俺がお前のことそんな好きじゃねーと思ってんだって?」
「、……え、と…」
「まぁ、俺の態度も悪かったと思うけど…」
「そういうわけじゃ…」
「…じゃあ何で、」
「…心配…とか、他の人に取られるのはなんとなく嫌だなぁとか、そういう感じかなって…」
「んなわけねぇだろ…。仮にそうだとしても、もうちょい 頼ったって…」
「せめて、カズヤくんが自慢できるような彼女になれたらなぁって思ったの…」
「…はぁ?!」
なまえの言葉に思わずあ然とする。
自慢…?既にそうだけど??
お前が俺を選んでるってだけですでに自慢だし、周りには付き合う前からだって十分羨ましがられてる。通り越して妬まれてたくらいだ。
「負担にならなくて、何でもしてあげられるような彼女だったら…もっと好きになってもらえるかも、とか…」
「普通に今まで通りでいいっての…!」
どうりで前より悪化してるわけだ、って納得すると力が抜けてベッドの端にうなだれる。
気持ちは嬉しいけど!噛み合ってねーんだよ…。
まぁ、はっきり言わなかった俺も悪いし、もっと早く聞かなかった俺も悪い…って、俺じゃねーか!これからはマジで気をつけねーと…と自戒にする。
「でも、今までもずっと頼ってばっかりだったし…」
「いいんだよ!その方が俺も…安心っていうか…」
「…?…でも、わがまま…いっぱい言っちゃいそうだし…」
「お前がわがままぁ?!…全然想像つかねーんだけど…例えば?」
「…手繋いでほしいとか、ぎゅってしてほしいとか…」
「…それ別にわがままじゃねーだろ…」
寧ろしていいのか それは、と思う。
手はまぁ…ガキの頃から一緒だしそこそこ機会はあったけど
いや、A国で抱きしめてもいるけど!あれは助けるためにで……あれ…素で耐えられるか…?と自分の理性に若干不安を覚えたけど今はとりあえず置いとく。
「でも…面倒だなってならない…?」
「なるわけねーだろ」
「…」
「……俺ってそんなに信用ねーの…?」
「違うの……嫌われたくないから、」
「〜〜っ」
マジで全然分かってねーなまえに言葉が出なくて。
どう言えば、なんて悩むのもバカらしいくらい伝わってねーんだから
全部、言うしかねぇだろ となまえの手をぐっ握って 決心する。
「変な心配ばっかしてねぇで、わがままでも何でもいいから もっと言えよ」
「…」
「お前が色んな奴と話すようになって 俺より…他の奴のが良くなるんじゃねーかとか…いくら心配したって何もできねーんじゃ、俺って居る意味あんのか?とか、思ったり すんだよ」
「…!」
「全然余裕ねーし、心も広くねーし、お前に熱まで出させて、マジでカッコ悪いとこばっかで悪ぃけど…でも、お前を嫌いになるのは絶対ねぇから」
こんなこと 顔を見ながら言えるはずもなく
床に視線を泳がせてる俺の手を、なまえが握り返してきて
これで少しは伝わってんのか?と思う。
けど、まだ 全部じゃねぇ。
「俺は、お前が思ってるより ずっと お前のこと…好きなんだからな」
これだけは絶対言わねぇと、って思ってたやつが結局 最後まで言えねぇで
何回も思ってきて 今更だって
俺の言葉に「…うん」と嬉しそうに笑う今のお前にだって
好きだって、そう思うのに 今の俺には、
たった1回
口にするのが精一杯だった。
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