青島カズヤ連載
名前変換
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どこかに行かれるのが不安になるってのは
いったい、どれくらい意識されてんだろ
この前のことがあってから、そんなことばっか考えちまう。
俺はもうどうしようもねぇなってくらい 意識してるけど
なまえが同じかって考えるとあんまりそうは思えなくて
ただでさえ前みたいに俺を頼ることも 少しずつ減ってきてんのに
なまえに気のある奴は増える一方だし
そいつらを『みんな、思ってたより優しくて…』とか言われりゃ正直 焦る。
俺のことが平気だったのは
一番最初になまえを助けたのが、偶然 俺だったって たったそれだけの理由で
俺と他の奴との差なんて マジでそれだけだし、いつ時効になったっておかしくない。
その差がなくなっちまったら、俺には 他に特別なとこなんか何もねーから……とその先を考えて手が止まる。
「……」
そんな 人の気も知らねーで…
前と変わらず、俺の部屋のベッドにもたれて寝てるんだから
意識されてないと思ってもしょうがなくねーか?
A国での緊張した様子を思い返せば まぁ、あれよりは全然こっちのがいいって思えるし、ただ疲れてんのかも とも思うけど……
もし 言ってダメだったら?
ってのが結局先に来ちまって
言わなきゃとは思ってんのに 言えなくなる。
だって、
「……メンテナンス、おわった?」
「!…まだ、途中」
「そっか」
こんな風に一緒に居られなくなるんだろ?
俺は、今さら お前がいなくなるなんて 耐えられる気がしねーよ。
…なんて 言えるわけもなく目を逸らす。
「ごめんね、また寝ちゃってた」
「別に…疲れてんだろ。帰りも絡まれてたしな」
「…だ、大丈夫だよ…?」
最近は、その『大丈夫』って返事すら
まるで 突き放されたみてーな気分になるんだからマジで重症だと思う。
強がってんのが分かるから余計ダメージくんだよ。
「…結構困ってたくせに」
「…名前で呼んでいいって言われたら さすがに困るよ…」
「……」
なまえの返答に うわ、それ すげー嫌。ってのが一番に浮かんでハッとする。
ちょっと待て…さすがにそれは心狭すぎねーか?俺。いや、相手がバンなら まぁ、許せる気がする…とか思ったけど
よく考えたら聞いたことねーなと思って口にした。
「そういや バンですら未だに名前で呼ばねーよな」
「男の子を名前で呼ぶのは…ちょっと、まだ、」
「……じゃあ俺は何なんだよ……」
「カズヤくんは最初からカズヤくんだったし…小さい頃だったし、特別っていうか、」
「、」
ちょっと沈んでたくらいの気分だったのに
なまえの言う『特別』が、単純に、嬉しくて仕方なくて。
それに好きだなんて意味は全然ねーのかもしんねぇけど
お前の中で 俺はまだ『特別』なんだ、って……
そこで安心するからダメなんだっての!!
と 優越感に誤魔化されそうになる自分に喝を入れる。
今まで『特別』でいられたことの方が奇跡みてーなもんだろ!
まだ特別だっていうなら、尚更 今しかねーんだって!
高校だって同じかどうか分からねぇし…今さら他の奴に譲れるわけねーし、とか うだうだ考えてたら何を勘違いしたのかなまえが不安そうに聞いてくる。
「……もしかして嫌だった?」
「はぁ?!違ぇよ!なんで今さら…!」
「だって…たまにからかわれてるでしょ…?」
「…お前がんなこと気にしなくていいんだよ。それよりお前はもうちょい警戒心持てよな。勘違いされても知らねーぞ」
「…?」
「…普通に俺の部屋で寝たりするじゃねーか」
「それは…なんか 安心しちゃって、」
「…全然安心じゃねーだろ…」
「?」
「…〜だから!俺がお前のこと好きだったらどうすんだよ!」
何かあったら困るだろ、と言いかけて…止まる。
………ちょっと待て今なんつった?!
「……え?ど、どう…?!」
「………!!」
違ぇんだよ…そういうつもりじゃなくて…!
なんかあってからじゃ遅いってか、誰かに好きになられても困るだろうし気ぃつけろって、そういう感じのことを言いたかっただけで…!!と思っても、あまりの衝撃に口から何も出てこない。
完全にやっちまった…。こんな風に言うつもりじゃ…!
誤魔化すか?!いや、でも俺のことだ。次がいつになるかなんて分かったもんじゃねーし もうこのまま言っちまった方が…
なんて覚悟も決めきれずに 文字通り頭を抱えていたらなまえに問いかけられる。
「……えっと…カズヤくんは、どうして欲しい…?」
「…は…?」
「私は、カズヤくんのしてほしいように してあげたい、ので…」
「……。っ?!」
一瞬、何を言ってんだ…?と思ったけど、意味が分かるとさらに混乱する。
いや待て、俺がどうして欲しいかって……
え?俺が付き合いたいって言えばそうなるってことか?いや…そんな都合のいい返事ありえねーだろ…!?でも他に意味…いや、でも……あー分かんねぇ〜〜〜
でも、もし…もし マジで言ってるなら……
答えはもらったようなもんだ。
いつまでもヘタレな俺には勿体ないって心底思う。
なまえならもっといい男をいくらでも選べるはずで
俺はこの先もきっと 気苦労とか絶えねぇんだろうなって分かる でも
それでも
「…俺のもんになって欲しい」
そればっか、思う。
「!…うん、」
「…マジか…」
あっさりと少し笑って頷いたなまえに、マジで言ってた…と頭を抱える。
これ、俺に都合のいい夢とかじゃないよな…?
そんな風に思ってんだったらもっと早く言やよかったとか
つまりなまえは俺のこと好きなのかとか
これからは彼氏ってことでいいんだよなとか
もうとにかくめちゃくちゃ嬉しいとか 思うことが山程あって、ニヤけんのも全然抑えらんねーしなかなか顔を上げられねーでいたら、またなまえが勘違いをする。
「あ…もしかして 冗談とかだった…?」
「んなわけねぇだろ?!」
それには即答して、人がどんだけ悩んだと思って…!なんて知る由もないことを考える。
いや、寧ろ知らなくていいんだけど…カッコ悪ぃし。
「…でも、いいのかな。私、頼ってばっかりだし、そんなに取り柄もないし…」
「…お前でねーんだったら俺はどうなるんだよ」
「…?カズヤくんは優しくて、面倒見よくて、正義感もあって、頼りになるよ?」
「!?なっ、な、何だよ急に…!」
「言えてなかっただけで…全部、ずっと思ってたよ」
「っ〜…そーかよ、」
なまえの言葉にそんな返事が精一杯で、顔を背ける。
知らなかった。
そんなこと
ずっとおもってた
なら、マジでもっと早く言ってくれたらよかったのに。
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