星結び
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「そういや、サーナイトがずっとこっちにいて実家は平気なのかよ?」
お茶を片づけてくれているサーナイトを見ながらかけられた問いに、思わず視線を上へ向けて答える。
「それは私も気になってるけど…私の方が圧倒的に生活力が欠けてるのよね」
「なんだ、自覚あったのか」
「いい機会だし自力でなんとかしようという気持ちもあったけど、実際サーナイトがいると頼り切りになっちゃって」
「だろうな」
「ママを想えば、ずっとうちにいさせるわけにはいかないんだけどね」
そうグリーンに答えながら
研究所にも少し慣れてきたし、徐々に自分でもやるようにして実家に帰してあげる算段をつけなきゃ…なんて脳内で考えていると
妙に弾んだ声でグリーンから提案があがる。
「オレさまがやってやろうか?」
「…何言ってるの…?」
「オレならひと通りやれるし、おばさんも納得させられると思うぜ?」
「確かにママはあなたを信頼してるけど…。恋人になったからって暮らしてもない家の家事を任せるなんてさすがにどうかと思うの」
「なら一緒に住めばいいじゃん!」
「……なるほど、こっちが本題ね…」
「よく分かったな」
そう言ってイタズラっぽく笑うグリーンに頭を抱えるのは
過去をふり返っても、これはあまり私の意見が採用されないパターンなのに合わせて、問題が大きいこと。
グリーンが強引なことはたまにあるけど、それは私に休息を取らせるためだとか夜更かしをさせないようにだとか、 気遣いであることが多かったから強く意見することもなかったけど
さすがに同棲なんて問題に、簡単に首を縦に振るわけにはいかないと納得させる材料があるかどうか思案しながら口を開く。
「…私たち交際を始めたばかりだと思うの」
「いいだろ別に。実質付き合ってるようなもんだったんだし」
「実質と実際は大きな違いだと思うの」
「そうかあ?」
「それにグリーンだって忙しいでしょう?」
「おまえが家にいるなら できる限り帰ってくるし、遠征もしばらくは控えるかなー」
「…おばさまが聞いたら喜びそうね」
「そーそー。いい加減落ち着けって言われてるしちょうどいいだろ?」
「だからって突然同棲は無理がない?」
「しょっちゅう入り浸ってたし変わんねーだろ。半分住んでるみてーなもんじゃん」
「それも過言だと思うの」
納得できないという目を向けたところで「そうかあ?」と、さっきと同じく 事実はどちらでも構わないと言わんばかりの返事に
正直覆せそうな材料も思い浮かばないし、何を言ったところでこのまま押し切られそうな予感しかしなくなると
一緒に暮らすことになったとしたら…なんて方向で物事を考え始めてしまう切り替えの早い脳に、気持ちだけが追いつかなくて思わず唸れば、グリーンは怪訝そうな顔をする。
「何がそんな引っかかってんのか知らねーけど、オレはおまえのためなら何でもしてやるぜ?人の面倒みるのも誰かさんのおかげで慣れてるしな」
「そう言われても…」
「なんだよ。オレと暮らすのがそんなに嫌か?」
「嫌じゃないけど」
「ならいいじゃん。これだけ待ったんだぜ?今までの分、四六時中一緒にいてーんだよ」
「それを出されると…強く出られないのよね…」
正直、生活力の低さに呆れさせる自信しかない点が不安なんだけど…
でもこれはきっと付き合う時と同じパターンで
私側の、グリーンには問題にすらならない些事なんだということは理解してるし
グリーンに少しずつ家事を教わりながら、ふたりで一緒に暮らすのは きっと
昔、グリーンの家に泊まって夜遅くまで話をしていたあの頃みたいで楽しいんだろうな、なんて
頭ではもう、そんな風に思えていたから
「なら決まりでいいよな!心配しなくても、ぜんぶオレさまがやってやるって!」と嬉しそうに笑うグリーンに、私は承諾する以外なかった。
「なぁ、結婚はいつがいいよ?なんならオレさまは今すぐでもいいぜ?」
そうすると次に飛び込んでくるのは結婚の話で、あまりの目まぐるしさに一瞬言葉をなくしながらも
さすがにそこまでは承諾できないと、手でも静止をかけながら断る。
「…ついたった今、同棲が決まったばかりだと思うの」
「今とたいして変わんねーだろ?」
「全然違うはずだけど」
「まだオレを待たせるのかよ」
「それを出されると強く出られないけど、さすがに落ち着いてもらえない?」
そう宥めれば、「仕方ねーなあ」と言いながらも機嫌がいいのを見るに 半分冗談くらいのノリだったんだろうけど
グリーンのことだから残りの半分は普通に本気だろうし…という予測を、裏切らないのだから困る。
「でもオレは端からそのつもりだぜ?」
「私も告白を受け入れた時点でそのつもりではいるけど…」
「はぁ?!だったら今でよくねー!?」
「それとこれとは話が違うの」
「違わねーだろ!」
「違うの」
「どこがだよ」
「グリーンは今と変わらないと言うけど、本当に恋人として過ごすのはこれからでしょう?自分で言うのも何だけど、私は恋愛面も生活面も至らない点が多いだろうから、グリーンにどれだけ負担をかけるかも分からないし、やっぱり不満だって生まれると思うの。そういう時に上手く擦り合わせできるかどうかとか、一方的な関係にならないように、交際期間はそういう確認するべき点がたくさんあって、」
「あー、わかったわかった!ったく…おまえ、こういうことに関しては慎重だよな。俺らなら絶対問題ねーだろ」
「経験値が足りないのも大きな要因だけど、自分以外の気持ちとなると不明な点が多すぎるから。それなのに未来のことなんてもっと分からないでしょう?グリーンだって一緒に暮らしてみたら気が変わるかもしれないじゃない」
「おまえ…マジでオレさまのことナメすぎだろ」
「そんなことないと思うけど」
「いいや、ナメてる」
そう言い切られると、証明できるものもなくて返せなくなる。
グリーンのことは信用してるし信頼もしてる。
どういう性格で、どういう行動を取りがちかもある程度は予測がつく。
それでも、心は…あくまでも予想の範囲でしかなくて
『理解った』だなんて到底言えるはずもない。
「…ただ、一貫して おまえは気持ちが変わらねーけど、オレの気持ちが変わる可能性があるって方向でしか話をしねー理由は理解できたぜ」
「、」
「オレの気持ちがそんなに分からねーって言うなら、今後はもっとあからさまな態度でいく」
「…どうしてそうなったの?」
「過剰に与えりゃ嫌でも分かるだろ?」
「えぇ…?その方法はどうなの…?何か別の問題が発生しない?」
「試してみりゃわかる」
「……」
「なんだよ。おまえ、検証とかするの好きだろ」
「好きだけど…まさか自分が対象になるとは思わないじゃない」
「いいじゃん。面白そうだろ?」
その言葉と心底楽しそうな笑顔を向けられて、思わず笑みが溢れる。
「やってみないと分からないところが、確かに面白そう」
言葉を交わして、見つけて、確認をして、
試して、確信を持って、言葉として正しく伝わって
はじめて、確実な事実となる
星を結ぶような
そんな過程をあなたと辿れると決まったことが、私は何より嬉しく思えた。
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