星結び
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「サンキュ、サーナイト」
いつも通り、サーナイトが出してくれた紅茶で一息ついて部屋を見渡す。なまえはまだ帰ってない。
別にじいさんとこだし寄ってもよかったんだが、なんかそういう気分になんなかっただけだ。
なまえのいない家で、寝転ぶには少し窮屈なソファに寝転んで天井を眺める。
オレとじゃデートになんねー、みたいな態度を取られたあの夜から
どうにも気が収まらない。
今までんなことなかったんだけどな…
気のある素振りをスルーされることなんかいくらでも…なんならその方がデフォなくらいだ。
オレは別に隠すつもりもねーから分かりやすく接してる方だし
恋愛に興味がなくても分かる程度のアピールはしてる。
なんならカロス地方は土地柄的に そいうのかなりオープンだったから
カロスに留学してる間なんて、好きなのか聞かれたら即答で肯定してたし、もはや彼氏面して過ごしてたくらいだ。
なまえもそれを普段と変わらず受け入れてたし、なまえの親からだってそういう扱いだったし、オレの気持ちに気づいてないなんてのはありえねぇんだ。
ただなまえが
『オーキド研究所の研究員になるまで、それ以外のことなんて考えられない』と一貫してそういう姿勢だったから
どれだけ好意を隠さずにいようと、付き合おうぜ、ってその言葉だけは一度も口にしてこなかった。
それを押しつけるのはオレの主義に反するからだ。
まぁ、オレさまが1番じゃないってことには思うところもあるが…
なまえが1番に望むものがあるなら、応援してやるのがオレなりの愛情表現ってわけだ。
このオレさまが1番を譲ってやったんだぜ?
それをしてもいいくらい、オレはおまえを大切に想ってる。
だから、
夢が叶ったなら、オレに振り向け。
いつの間にか、眠っていたオレの頭にはその考えだけが残ってた。
カタリ、とキッチンの方で静かに食器の置かれる音がしたから
ソファの肘掛けに腕と頭を乗せて、うつ伏せになるよう体を捻れば
キッチンの方になまえの姿が見えて、まだ覚醒しきってない頭で帰ってきてたのかと思う。
「おはよう?」
「おー。起こせよ」
「ぐっすりだったから。晩ご飯、食べていくでしょう?」
「食う」
「じゃああと15分後くらい」
「おー……」
体勢はそのまま、まだうっすら重い瞼を閉じて
あの夜のことなんて、何もなかったかのような変わらない態度に
もういっそオレがこの家に住んでやろうか、なんてヤケクソなことを考える。
まだ、夢は叶ったばっかだと、早いのかもしんねーと、思いもする。
それがなまえには無意味だと分かってはいても、どうせならもっと場所も雰囲気も選んでと、考えもする。
けど、どうにももう自分を納得させられそうになくて
飲み物を持って来たなまえを捕まえて、体を起こした。
「なぁ、オレのこと好きか?」
「…急にどうしたの?まさか女の子にフラれちゃった?」
「そんなわけねぇだろ。オレさまほどの男は世界を探してもそうそういねぇぜ?」
「ふふ、そうよね。好きだよ?負けず嫌いなところも、面倒見がいいところも、自信に見合うだけの努力をしているところも、もちろん優しいところも」
違う
「…さすが、よく見てるじゃねーか」
「もう長いつきあいだもの」
そうじゃねーんだ
「…オレもお前のこと好きだぜ。女として」
「…え?」
「間抜け面」
「ええ…?さっきのも、そういう意味で聞いてたの?」
「そりゃそーだろ。もうガキじゃないんだぜ?オレたち」
人として、友人としての言葉が欲しいんじゃないと真意を伝えても
どこか締まりが悪いのは一体何が足りねーのか。
「……」
「返事は?」
「……」
「おいおい、オレさまが恋人で不満でもあんのかよ?」
「逆。私でいいのかなって話」
「何だよ、いまさら」
「グリーン、モテるし良い子をたくさん知ってるだろうから自信ないのよね」
「…オレさまのパートナーは昔からお前以外にありえねぇっての」
「ふふ、そうだったんだ」
一瞬、気を引きたさに他の女に言い寄られた話なんかしてた幼稚な頃の自分を呪いもしたけど
結局 ろくな返事が返ってこないのをみるに そこは重要なことでもねーんだろう。
今告白したってのに、いつもと変わらない様子でサーナイトから受け取った晩飯をテーブルに並べ始めるなまえにため息をつく。
オレさまが相手にされないとかあるか?全く意識されてなかったとか…さすがにねぇよな?と飯を食いながら様子を伺っても、ただただ普段通りで。
研究所であったこと、新しく発見されたポケモンの話、他地方で発表された論文の内容…マジで話題すらもいつも通りすぎて頭痛がしてくる。
一応、オレがどういうつもりなのかは面と向かって伝えたわけだし
急かして断られるくらいなら多少は待つけどよ…。
昔のオレならここで耐えらんなかっただろうから、オレも大人になったもんだなと自分に言い聞かせるようにして、なんとか返事を促すのをこらえた。
それでも、これまでのように何事もなかったことにされるのはさすがに困ると
帰り際「オレさまの言ったこと、ちゃんと考えとけよ」とだけ言えば
「…もちろん」となまえは静かに答えた。
それを聞いて「じゃあ帰るか」とピジョットに声をかけ、飛び立つ。
応えたからには、遅かれ早かれ結論が出るってことが確定した事実に
緊張、恐怖、期待、でもどこか浮かれるような、そんな落ち着かない気持ちを静めるには、上空の澄んで冷えた空気はちょうどよくて吸い込む。
それを吐き出して前を向けば、普段とたいして変わんねーはずなのに
普段とも、前になまえと見た時の夜空とも、全然違う風に見えて
柄にもなく
星に願う
なまえの答えがオレの望むものであるように、と。