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オマエと顔を合わせるのが、こんなにも恐ろしいと思うのは生まれて初めてだ。
そう思っても、オレの足は止まらない。
エルフに身体を乗っ取られ、それがなまえ自身ではないと分かっていても
あの目で、あの声で、拒絶されたことは 何よりも心が揺らいだ。
オマエがオレを分からぬ日が訪れるなど、想像もしていなかったのだ。
オマエが鼓舞し 支えてくれることを当然のように感じていたが
オマエが傍で微笑んでいてくれたから、オレは
ただ がむしゃらに兄上や姉上を目指し励んでくることができたのだと気づいたのだ。
だから、どうか 『あの日』が最初であり最後の日であってくれと願いながら扉を開ける。
「なまえ!!」
「、…レオ…?」
「~~!!心配したぞなまえ!オマエが目を覚ましたと聞い…」
「レオ…!」
「…お、おい!どうした!?なんだ?!」
己が認識されていることに安堵したのもつかの間
ベッドに駆け寄ったオレよりも先に、
手を伸ばしたのは なまえだった。
抱きしめられて、自身が抱きしめようとしていたことを忘れ
動揺するオレは、次の瞬間にはまた そのことを忘れる。
顔をあげたなまえが、泣いていたからだ。
「私っ、私…皆に酷いことを…!」
「大丈夫だ!あの程度でオレたち紅蓮の獅子王団が倒れるとでも思ったか?皆無事に決まっているだろう!」
「…良か……良かった…っ」
「…泣くな、らしくないぞ」
「…ごめんなさい、でも、怖くて…はっきり覚えているわけじゃ、なかったから…」
震えて、涙を流し、弱音を吐く
そんななまえの弱った姿を見るのは初めてで驚いた。
背に腕を回し、大丈夫だ と声をかけながらも
思い知るのは己の無力さばかりだ。
オレにもっと力があれば…兄上の目覚めを待たずとも
他の団員達と交戦する前に なまえを開放できたはずで
そうすれば、こんな風に気に病ませることもなかったのだ。
兄上の言う通り『まだまだ』だ、オレは。
「団に戻るのも…何だか、乗っ取られていた時の感覚が抜けていない気がして…また 皆に迷惑かけてしまいそうで…私…もし、このまま…」
なまえの不安を拭える実力にすら届いていないのだ。
努力も、技術も、知識も、覚悟も、経験も
何もかも、今までと同じでは到底足りぬ。
だが 足りぬというのなら、答えは決まりきっている。
「なまえ、」
「!…ごめんなさい、弱音、ばかり…まだ ちょっと混乱して、」
足りぬならば足りるまで
「乗っ取られている時、オレの言葉は届いていたか?」
「…レオの声は、聞こえていたけど内容までは はっきりしなくて…」
オマエの不安に届くまで
「ならば今一度伝える!俺の新たな覚悟と共に!!」
「…?」
兄上や姉上に追いつき越えるその日まで
「オレが愛する者の手で、これ以上 仲間を傷つけさせはしない!!」
ただ、積み重ね続けるのみ
「だから安心して戻ってこい!例えまた乗っ取られたとしても、今度は絶対にオレがオマエを元に戻す!!」
「レオ…」
「オレは必ずもっと強くなる!オマエがオレの隣で、いつも 笑っていられるくらいにだ!」
「……うん…!私も、一緒に戦い続けられるようにもっと 鍛えなくちゃ」
「それでこそ、なまえだ」
笑いあって、支えあって、高めあって、
抱きしめあって。
そうして
「レオ、さっきの…団の皆の前で言ったの…?」
「? ああ!」
「…そう…復帰する時どんな顔をしたら…」
「皆 知っていただろう、オレがオマエを愛していることくらい」
「…私は知らなかったよ?『そんなにも』愛してくれているなんて」
「そうなのか!?」
また笑いあって
誓う。絶対に強くなると。
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