ワールドトリガー
名前変換
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冷たいなにかを
追いかけるように目を開ければ
「あ、起きた」
ぼんやりと、映る人影に
渇ききった喉が囁くような音を出した。
「……出水くん…、」
「…素だとまだ出水の方が先に出てくんのな。まぁ、いいけど」
そんな出水くんの声に まだぼーっとした頭で
そうだ、名前で呼ぶんだった…と少し前に決めたことをなんとか思い出していれば
ガサガサとビニール袋の音が部屋に響いた。
「なんか食う?つってもおれ、作れるの炒めるやつとかだしコンビニ寄ってきただけだけど」
ゼリーとかなら買ってきた。なまえさん好きなやつ。と見せてくれる彼をぼーっと見つめていたら出水くんは首を傾げる。
「?おーい、なまえさん生きてる?」
「…うん、」
「熱高そうだし薬のめば?」
「…うん」
「スポドリもあるけど」
「…うん」
「…おれのこと好き?」
「…うん」
「じゃあ俺と結婚してよ」
「…うん」
問いを重ねるにつれて、口元がへにゃりと曲がっていく公平くんを見て
応える度、少しずつはっきりしていく頭で 可愛いなあ、と思いながら目を閉じたら
しばらく間が空いたあと「……もっかい聞くけど生きてる?」と落ち着かない、少し嬉しそうな公平くんの声が耳に届いた。
「…だいじょぶ。ありがと…でも 公平くんは、風邪うつっちゃだめだから、お家帰って?」
「なまえさん知らねーの?バカは風邪ひかないんだって」
「公平くんは、ばかじゃないから だめだよ」
「残念、おれ 弾バカだから」
「…いつも否定してるのに、」
「今日は特別」
特別、って言葉が
本当に
とくべつに聞こえて
甘えてしまいそうになるのは 風邪のせいだから。
だめだ、しっかりしないと…とまた目を閉じた。
彼はボーダー隊員で、A級1位の隊だけど
年下で高校生だから
年上の私が、そういうところ ちゃんと気をつけてあげないと
「だめだよ、ほんとに。私なら大丈夫だから。困ったら、トリガー使えばいいし」
「…なまえさん、昨日それやって無理に出てきたから悪化したって分かってる?」
「分かってる。でも本当に大丈夫だから、ね?」
「そんな子供に言い聞かせるみたいに言ってもダメだって。今日はいーんだよ。それに、もう任務で帰らないって言ってきたし」
「…だめだよ、嘘ついちゃ」
「元気になったらいくらでも怒られてやるって」
「怒られるの私だけど…」
「おれのために怒られるなまえさんかー。それもいいな」
「…ばか、」
「そ、なまえさんバカ」
だめだよ、と言う間も
押し返す腕の力も ないまま
だめだと、思ってはいるのに
「だから、風邪なんかうつんねーの」
そう言って キスの後にニッと笑って見せられると、押しきられてしまう。
「うつるよ、」
「はいはい」
そんな適当な返事といっしょに、今度は額にキスをする公平くんに
弱いなあ……と自分に呆れた。
「…怒られたら、慰めてね」
「そりゃもちろん」
「風邪移っちゃったら、お見舞い行くからね」
「あ、それはありかも」
「…ないよ」
「ウソだって。んな心配しないで もっかい寝れば?」
「……うん、」
傍に、居てね
ぼんやりしてきた意識のままそう呟けば
「一生居るつもりだって」とまたプロポーズみたいなことを言って
ひんやり
気持ちのいい手を私の額に乗せた彼は、おやすみと呟いた。
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