26歳
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『今日は練習終わったら、私のおごりでご飯行こうよ~』と珍しくなまえの方からメールしてきて
「おめでとー!」なんて言いながら乾杯してくるから何かと思えば…
春高の代表決定戦に進出したんだし、なんて言われて めちゃくちゃこれからじゃねぇか、とツッコミつつも
「代表決定戦も頑張るぞー!的な?ほら、烏養くんにもご褒美がないとね!」
とか、んな事言われたら嬉しくないわけねぇし
まぁ、こういうタイミングか合宿の後くらいしかコイツと飯食うこともないからいいか、なんてほだされる。
「まぁ、今日は正直 私が呑みたかっただけなんだけどさ!」
の余計な一言でいつも通り色々台無しなわけだけが、それはもう無視して、よく冷えたビールを勢いのまま喉に流し込んだ。
「そういやお前いつまでそのガラケー使ってんだ?メール打つの面倒くせぇんだけど」
「…それ会社でも言われるんだけど…」
「まー、慣れちまえば便利だからな」
「男って新しい機械好きだよねー」
「男かよ…」
「うん、なんか自分詳しいんで機種変するなら相談乗りますよ!とか言って…そこまで?」
「…それ、お前に気でもあんじゃねーの」
「あぁ…そういうことなの?」
「知らねぇけど」
内心複雑ながらも、そりゃそれくらい居てもおかしくはねーよな、と普通を装う俺とは違い
「なんだそういうことかぁー」なんて思ってたよりも薄い反応に違和感を感じて
「彼氏欲しいなら、チャンスなんじゃねぇの?」
そんな、思ってもないことを口にする羽目になったのは
結局何の進展もさせてない俺の立場がそこだからだ。
恋人でも、友達でも、仲間でもなく
元同級生
それ以上にしっくりくる言葉がねぇ。
その立場は同僚ってのとどっちが上なんだろうな、なんて煮物をつつくなまえを見ながら考える。
「えー。やだよ、同じ会社の人とか」
「…は?」
「社内恋愛とか絶対面倒くさいし」
「…でも飯くらい誘われんだろ?」
「そりゃ誘われるけど、1対1とかは信頼してる上司とくらいしか行かないよね」
「…誰とでも行くと思ってたわ、お前のことだから」
「烏養くん私のこと何だと思ってんの?怒っていい?」
「いや、俺だといつも二つ返事でついてくっから…」
「烏養くんは会社の人じゃないじゃん」
そんな言葉を聞いて、そういや昔も『部内恋愛は気遣うからやだ』とか、何かそんな変なくくりにだけはこだわってたっけな…なんてふと思い出せば
自分が恋愛対象外の枠から抜けてた事と、同時に
「…でも んなこと言ってたらいつまでたっても彼氏なんかできねぇぞ」
自分がひねくれたことばっか言ってる事に気づいた。
どうしてこう、思ってねーことばっか口から出てくんのか…。
これじゃ、じじいに根性無しって言われても仕方ねーな…なんて自分に呆れてる俺をよそに、またとんでもないことを言い始めるなまえに耳を疑う。
「うん、でも30まで居なかったらもらってくれるんでしょ、烏養くんが。なんかそれでもいいかなーって気がしてきた」
「…は?」
「最近は休みの予定聞かれても、すっかり店番が板についちゃって彼氏作る暇もないし」
「…いや、それは悪いと思ってっけど、」
「じゃあ責任とって彼氏にでもなってもらおうかな~?」
「はあ!?」
いや、マジで、何を言ってんだコイツは!
机に肘をついてニヤニヤと俺の顔色を窺ってくるなまえに
いや、確かに言ったけどよ、とは思ってんのに口から何も出てこない俺になまえが小さく笑う。
「冗談だよ~冗談!いくら私でもそこまで理不尽じゃないってー」
そう言って酒を仰ぐコイツが、どこまで本気なのかは分かんねぇし
俺自身がなんでこう思うのかも分かんねぇけど
なんでか突然、今しかない 気がして
たばこの箱をくしゃりと握った。
「……別に、お前がいいならそれでもいいけどよ」
「ん?」
「…別に、お前のことは…高校の頃から嫌いじゃなかったからな、」
なんて、俺が顔を見て言えるはずもなく
誤魔化すみてーに 半分潰れた箱からたばこを取り出しながら言った。
よく考えれば…、そうだったんだよな。
ただ、部活のマネージャーなんて憧れっつーか、
狭い人間関係の中で一番身近に居るもんだから、ほとんどの部員がそんな感じで
真剣に好きだったのか聞かれると、よく覚えてねぇってのが本音なんだが…
「……私のこと、好きだったって言ってるみたいに聞こえる」
「……」
今は、それでもいいかと思える。
「…んー、じゃあ本当に付き合ってみちゃおうか、私達」
そんななまえの返しに、軽いな…なんて思いつつも
たばこをふかしながら
「………おう」
と素っ気なく答えるので俺は精一杯だった。