ハイキュー!!
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体育館の中から、うす暗い空を見上げて
小さく
ため息をついた。
「ヘイヘイヘーイ!!!」
ジメジメと
じわじわと
暑くなり始める6月に
梅雨らしく続く雨の日が、どうしても気分を憂鬱にさせるのに
今、体育館に走りこんできたこの人は
今日も相変わらず元気だ。
「おはようございます、木兎さん」
「おお!なまえ!おおぉ…お?」
いつもとは違って妙な失速を見せ
首をかしげる木兎さんに、同じく首をかしげた。
「?」
「…なんだー!?元気ないな!!」
もう、6月。
まだ、6月。
もう既に飽きつつある授業と
やっと少しずつ、慣れてきた部活や、先輩。
2か月も経っていないこの関係性でも分かりやすいこの人は
こんな些細な変化を、感じ取れる人だっただろうか?
「…そう、ですか?」
「そうだ!!」
「「……」」
「おはよ」
「はよォ。2人共はえーな」
「おーはよー」
「あ、おはようございます…」
「はよ!!」
木兎さんの後ろを、小見さん、木葉さん、猿杙さんと通っていって
挨拶を交わすその間にも木兎さんはじりじりと距離を詰めてくる。
「つか木兎は何してんだ?」
「ん?なまえが元気ねーから!」
「…あ、そーお?何かあったん?」
「それを今確かめてんだろー?!」
「え、そうだったんですか…?」
「そうだ!!」
伝わってねぇの!ウケる!って笑われてるのも気にせずじいっと見てくる木兎さんに
心配してくれてるんだ…っていうのが分かると、余計理由に困ってしまう。
何十分費やしても
まとまってくれない髪の毛に
ぴしゃりと跳ねて濡れる足元。
じめじめと漂う湿気、
全てが気分を憂鬱にさせる。
簡潔に答えるとすればひとつだけ、
「雨、降ってるので…」
「……」
「……」
次の言葉を待ってるのか、木兎さんは何も言わなくて 少し間があいた後に、より首をかしげて不思議そうな顔をした。
「なんだ!そんなことか!!」
「、」
「よし!これでどーだっ!?」
え…?え、と戸惑った声しか出せないのは許して欲しい。
何を思えばいいのか分からないから、
「これで俺しか見えねーだろ!」
混乱しているのはきっと私ひとりだけ。
抱きしめられて、そんなことを元気よく言われてしまったら
「見えないです…」と呆けた頭で答えるしかなかった。
「…木兎さん、何してるんですか入口で」
「おー!赤葦!」
「…あ、赤葦さん…?」
「……」
木兎さんの向こう側から聞こえてきた声の主へ
思わず助けを求めるような声色になってしまいつつ名前を呼べば 無言で。
今までの感じから察するに、多分 木兎さんに呆れているんだろうとは思うけど。
「なまえちゃんを元気づけようとした結果的な?」
「天然って怖ぇよなァ」
「つーかさー…」
「木兎さん、それセクハラっていうんですよ」
「何ーっ?!!!」
そこでやっと離れた腕に、改めて抱き締められていたことを自覚して照れる。
それを誤魔化すように赤葦さんに挨拶をすれば
迷惑なことは言わないとすぐ調子に乗るから気をつけて。
と言われて
迷惑
とは思えない自分のこれからを考えると、もう抱き締められていないのに動悸が激しくなる気さえした。
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