26歳
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
好きだと言うわけでもなく
愛してると囁くわけでもなく
付き合って
どうやら 結婚までするらしい。
いや、らしいっつうか…すん、だろうけど。
と他人事のように並べてみたところで結局 抱えるのは自分の頭だ。
『今さら急ぐことでもないんだし、春高終わって落ち着いてからでいんじゃない?ま、タイミングは任せた~』
と言われ…
それに対しても『そうだな』としか返す余裕のなかった俺は
今、気づいたわけだ。
俺から言い出さなきゃなんねぇ意味を。
店の椅子に腰掛けながら手にしてた新聞は、見事に手元がぐしゃぐしゃで
改めてこっちからプロポーズ紛いのことをしなきゃなんねーことに気づいて正気でいられるか!
と叫びたくなるのをなんとか堪える。
別に、答えはもう決まってんだから
今更 気負う必要なんかねぇのは分かってんだけど!
一生に一度だと思うと、そう割りきれるもんでもないらしい。
つか、何て言やいいんだ!?
『嫁に来い』
いや、どんな流れで言うんだよ。
『春高終わったしそろそろ籍入れるか』
まぁ、これが妥当だな。
いやでも、流石にもうちょいちゃんと言った方がいいのか…?
かといって…
『俺と結婚してくれ』
なんて んなこっ恥ずかしいこと改めて言える気もしねぇし…!
「はーーー………」
長いため息を新聞の中に吐き出して
よくアイツあんな軽い感じで話振ってきたな…と少し日の長くなってきた外を見ながら途方にくれる。
まぁ、春高終わったし…でいいよな…。
なまえのことだ、俺にんな大層な期待もしてねぇだろうし。文句言われりゃそん時考える!
とか、投げやりながらも意気込んできたわりに
いざ面と向かって口から出てくんのは バレー部のことと煙草の煙がせいぜいで
「……春…、」
「春?なに~?春にかこつけて花見で酒でも呑みたいって?町内会組で集まる?」
「あぁ!?いや、…まぁ…それもいいんだけどよ…」
「酒について歯切れが悪い烏養くんとは…体調でも悪いの?」
「ちげぇよ!」
じゃあなんだね~~?と呑気に返してくるなまえにどうも気が抜けちまって、何もねぇよと適当に手を振る。
結局、籍の『せ』の字も出てこねぇのな…と自分に呆れて
じじいに知られたら間違いなく投げられる…。なんて、ありもしないことまで連想する始末だ。
「?まーいいけど…そーだ、今日の本題!」
「?」
「一応用意したんだよー、はい」
「なんだ?」
「チョコレート。ハッピーバレンタイン~」
「お…おう。さんきゅ…」
「お返しは2倍でいいよ」
「倍にはなんのかよ」
「5倍がいい?」
「勘弁してくれ…」
「10倍でもいいよ~?」
「増やすなっつの!」
両手を広げてひらひらと手を振るなまえに
口ではそう言っても
結局はなまえのペースに乗せられて
大人らしい、手触りのいい紙を巻かれたそれを片手に
一応、とか言ったわりにはえらく高そうな…10倍したらいくらだ…?なんて つい真面目に考えちまう自分に薄く笑う。
「やだな~冗談だよ、じょーだん!」
「お前のは冗談に聞こえねぇの」
「そりゃ10倍だったら それはそれで嬉しいもんね~」
「……」
やっぱ本気じゃねーか…と内心でツッコむ頃には
10倍を何にしたもんか、ってのに優先順位を持ってかれて
「まぁ、なんか用意はすっけど…」
どうやら『その気』は、次に持ち越しらしい。
「期待はすんなよ」
そう釘をさしながら、『次』で済めばいいけどな…と弱気なことを考えた。