26歳
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県代表戦をなんとか優勝で終えた後
『おめでとー。春高もガンバレ!』
と、いつの間にか覚えたらしいラインのメッセージに
『おう』と一言返したっきり。
一息つく間、なんてもんは勿論なく
今までにないくらい忙しいっつーのに…
「…はい イエ。あの 間に合ってると言うか…ハハハ…」
と、そんな乾いた笑いを返さざるを得ない話題はどうしても尽きねぇもんで
OB会の実家に電話をかけると高確率で薦められる見合い話に
今の時代に見合いなんつーもんがまだあんのかよ!と文句のひとつでも言いたくなったが
見合いなんてするぐらいなら、と ひとり思い浮かべてしまう自分の頭を受話器を置きながらガシガシとかいた。
それをちょうど店に顔を出したウチザワさんに愚痴ったところで「お前もそういう歳になったか!」なんて笑われて
そこですかさず「そういやお前の代わりに店番してくれてる…」とやっぱりなまえの話になるんだから
それはさておき、とはどうにもさせてもらえねぇらしい。
そんな状態のせいかどうかは分かんねぇが
つい買っちまった土産を手に、向かうのはなまえの家。
「よ」
「烏養くんだー、どしたの?」
「久々に飲みにでも行くかと思って」
「お、いくいく~!」
「あとこれやる」
「何?」
「土産。さっきちょっと山形まで行ってきてな」
受け取った袋の中を確認しながら
「頼んでないのに…お土産買ってきてくれるなんて…!」と感嘆の声をあげるなまえに なんか気恥ずかしくなって
何だよ、と聞く気もない先を催促しちまう。
「これが教育の賜物ってやつ?」
「茶化すならもう買ってこねぇぞ!」
「やだやだ嘘だよ~超嬉しい!」
思い切りのいい笑顔で何を言うかと思えば…と呆れつつも
「さっさと飯行くぞ飯!」と照れ隠しに急かした。
「でも珍しいね、平日に来るの」
「…なんか美味いもんでも食いてぇ気分になったんだよ」
「と言いつついつもの飲み屋ですが」
「いーんだよ、ここがうめぇの!」
「私は奢ってもらえるからどこでもいいんだけどね~」
「なら黙って食っとけ」
「なんでよ喋ろうよ。何かあったんじゃないの?」
「は?何が」
「バレー部」
「…なんで、」
分かるんだ…?って考えが顔に出てたのか
「そりゃ分かるでしょー」となまえは笑う。
続けて「一応恋人ですからー?」なんて茶化されると
実際、なんつーか…
無意識に会いに来る理由作ってて
美味いもんなんてのも明らか口実でしかねぇし
別に愚痴るつもりなんてもんはないにしろ
ひと息つくのに
俺自身が
ひとりじゃなく、なまえの隣を選んでるってことを
改めて思い知らされてるような気がして
気恥ずかしさから「別にたいしたことじゃねぇよ」と誤魔化した。
「えーなに?」
「だから何もねぇって…」
「いやいや気になるでしょー。なに、面白いこと?」
「面白いわけあるか!日向のやつが勝手なことしやがるから…!」
って そんな調子で、結局 愚痴も上手く引き出されて
帰る頃には ま、なるようにしかなんねぇな!と開き直るくらいの気持ちになってんだから まったくなまえ様々だ。
こんな調子だと
礼として連れて行ってるはずが、礼になってないような気がして
元より飲みに連れてくくらいじゃ釣り合いのとれてねぇ頼みではあったんだが…
他に何かねぇもんかと首を捻りながら家路を辿る。
どっか行きたいとこに連れてってやるとか、何か欲しいもん買ってやるとかか…?
…なんか子供相手みてぇな選択肢しか出てこねぇな…。
「今度は何考えてんのー?」
「あ?あー…いや、」
「なにー」
「……お前どっか行きたいとことか、欲しいもんあるか?」
「……」
一瞬、嫁に貰ってやる、なんてバカみたいなことも浮かんだが
コイツにその気があるのかもわかんねぇ上に 何の礼にもなんねぇわな…と思うと
コイツの望むもんなんか検討がつかなさすぎて そのままを口にした。
「そこはもう気にせず甘えとけばいーんじゃない?付き合ったんだし、助け合いってことで」
「……」
「なぜ腑に落ちない顔?」
「いや、別にそういうわけじゃねぇけど…」
そう言われても、
『何かしてやりたい』なんて思うのは やっぱり
そういうことなんだよな…
なんて 自分へ確かめるように心の中で呟く。
「お前、そういう奴だったんだな」
「そうだよ~。優しい彼女でしょー?」
「それを自分で言うところが残念で仕方ねぇけどな」
「そこも魅力なのに。烏養くんってば分かってなーい」
「へいへい、そりゃ悪かったな」
口ではそう言いながらも、その魅力とやらを既に悪くないと思ってる自分に笑った。