看板の無い喫茶店
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名無しさんは3ヶ月前に新しく入ったクルーだった。
コイツ、女にしとくのは勿体無ぇ位に強ぇのに、端正な顔して出るトコも出てやがる。
いつもルフィやウソップ達とガキみたいに騒いでると思えば、ふと絡む視線が妖艶だったりした。
所謂ギャップってヤツで、俺ァ気付くといつもアイツを目で追ってた。
それが段々見てるだけじゃ物足んなくなって、気がつきゃ見張り台で名無しさんを組み敷いていた。
信じられないという表情で目を見開くアイツの顔が、今でも忘れらんねぇ。
一度ヤっちまえば、なし崩しだった。
あまり話し掛けて来なくなったアイツの声を聞けるのは、そん時だけだったしな。
誘えばすんなり付いてくるから、名無しさんも俺に好意持ってんだって、言葉なんてモン無くたって気持ちは通じてるって、思っちまってたんだ。
なのに、今日だ。
『ゾロ…もうこういうのやめよう』
「は?」
情事後特有の臭いがする倉庫で、唐突に名無しさんは言い出した。
『だから、体だけの関係なんて嫌なの。もうやめたいの』
体だけの関係?何だそれ。お前は俺の女じゃなかったのかよ。
「…………勝手にしろ」
俺の気持ちなんて、何も通じて無かった。
お前の気持ちなんて、何も気付いてなかった。
名無しさんが出て行った後も、俺は隅に転がっている酒樽をずっと見続けた。ずっと見てたら気が付きゃ夜が更けていた。
昼から飲まず食わずでも腹なんぞ一向に空かなかったが、いつまでもここに居る訳にもいかねェ。酒でも飲もうとキッチンへ向かい、扉を少し開けた所で俺は足を止めた。
中から名無しさんの話し声がしたからだ。
いや、話し声と言うより鳴咽だ。泣いてやがる。
『サンジくん…ッ私…』
「辛い時は、俺がいるだろう?もっと頼ってよ」
何だ、そうか。そういう事か。
俺、馬鹿みてぇだな。
好きな女襲って、勝手に勘違いして。
アイツには想う男が居たのかよ。
可哀相な事しちまった。
--今日は酒場で飲むか…
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