Rainbow 9
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キャビネットの戸を開け所狭しと並んだ薬品を押し除けつつ奥に手を伸ばすと、ひんやりとした金属に指先が当たった。
それを手前に手繰り寄せる。
手中に納めたのは銀色に光る女物の装飾品。
まるで彼女の痕跡を確かめるかの如く、指先で撫でるように握り締めた。
ベッドの上、寝転びながら目に翳し、一心に見つめていた名無しさん。
至近距離で交わったその褐色の瞳に俺しか映っていないと思った時、永遠にそうであればいいと願った。
他の者なんて入り込む余地など無い程に、俺を映していればいい。
…結果的にその欲求は最悪の事態となって返ってきたが。
アイツも生きてる生身の人間だ。玩具なんて今は片鱗も思ってねェ。クルーに諭されたのもあるが、アイツの不満そうな顔を見るのは俺も嫌だった。だからこそ、意思を出来る限り尊重しようと、そう思うのに自身の中で上手く感情が噛み合わない。
結局隣に居るのは曇った表情をした名無しさんだった。
もしも
今この場にいない事が、俺の側にいない事が彼女の意思だとしたら。
あの時些細な事で腹を立てなければ、あの場所で手を離さなければ、彼女は心と共に今もこの船に乗っていたのだろうか。
…いや、それすらも俺の支配欲か。
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