Rainbow 8
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お風呂上がりの濡れた髪を後ろに払い、氷が溶けて汗をかいたグラスを持つと、つるっと手から抜け落ちた。
『………あ………』
――ガシャン!――
フローリングに落ちたグラスは茶色い液体を撒き散らし、大小さまざまな形に変化して散らばる。
私はその場にしゃがみ込んでそれを見つめた。
…良かったのかな、エースをすぐに帰さなくて良かったのかな…。
勝手な我が儘に付き合わせてしまってる。
自分だって知らない世界に飛ばされて、早く帰りたくてしょうがなかったくせに。
そうだよ、どこにも存在出来ずに帰れるかも不確かで、たった一人で生きて行かなきゃって分かってたけど、心細くて堪らなかった…
でも…
そんな私に、居場所をくれる人がいたんだ。
船を降りなくてもいいって
ずっと乗ってても、いいって……
俯いて、深く、深く溜息を吐いた。
……ロー……
…私、また話の中身まで読まずにいつもの調子で怒らせた。
そろそろと手を伸ばして、液体にまみれた破片を手に取る。
元通りにはならない割れたガラス。
壊れたまんまで
私達みたいだ
……もう、謝る事もお礼を言う事もできないよ…。
ただ恨めしいのは自分の強情さと跳ねっ返りの性格。
もう少し素直になれたら何かが違ったかもしれないのに。
「…落としちまったのか?」
顔を上げるとタオルを首にかけたエースと目が合った。
『あっすぐ片付けるよ。もうお風呂上がったんだ?』
焦って破片を集めようとすると、横からそれを遮られる。
「危ねぇから俺がする」
触れたお互いの指先に動揺して直ぐさま手を引っ込めた。
『…ごめんね』
「なんだこの位。俺こそしばらく世話になっちまうんだしよ」
『……ごめん…』
「…いいって、気にすんな!」
もう一度、心の中で呟いた。
もはや何に対しての謝罪か、誰に対してなのか、自分でもよく分からなかった。
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