Rainbow 8
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久しぶりに訪れた自分のマンションに、大袈裟だけど望郷の念を感じる。
ガスメーターの下からスペアキーを取り出し部屋の鍵を開けた。
『…それにしても凄い度胸だよ』
突然知らない世界に飛ばされたにも関わらず、暢気にメシ屋に入って爆睡とは、見上げた根性だ。
「…ここは?」
『私ん家、誰も居ないから安心して。あ…靴は脱いでね』
挙動不審に部屋へ上がったエースはダイニングに立ち尽くす。
私はテーブルにアイスティーを二つ置いた。
「いやーまいった。突然ワケ分かんねぇトコ来ちまって…。でも知ってる奴に会えて良かったよ」
ようやく落ち着いたのか、椅子に座ると帽子を取り、くせっ毛の髪を後ろに掻き流した。
「…なぁ、なんか見た事ない町並みだけど、ここはグランドラインか?」
『………違うよ…』
住み慣れた自分の部屋で“グランドライン”という言葉がこうも不釣り合いに聞こえるとは。
つい最近まで飛びかっていた言葉なのに。
「…ならどこだ?名無しさんが連れて来たのか?』
私は何と答えて良いのか分からず押し黙る。
そうだとも、そうでないとも言えない。
「どうした?」
自分を見つめる澄み切った瞳に心臓が跳ね上がる。
ごくり、と唾を飲み込んだ。
…今、部屋に二人っきりなんだ…。
『…こ、ここはエースの居た所からは少し遠いんだけど…』
その瞳に少し不安の色が混じる。
『大丈夫、私、帰る方法知ってるんだ』
寄せられた眉が緩み、口元に笑顔が戻ってくる。
…そうだよ、エースは笑顔が似合う。
もっと笑って、微笑みかけて。
もっと色んな、表情が見たい。
…もう少しだけ、側に居て…
『…ただ、今すぐに帰るのは無理なんだけど…』
私はポケットの中の粒をギュッと握りしめた。
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