Rainbow 8
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『マジでどこいったのよー!』
あれから色んな所を探した。
ショッピングセンターやオフィスビル、路地裏の隅まで。
考えればこんなに人通りの多い中、連絡手段もない人間を探すなんて雲を掴むような話だ。
『もう、帰ろっかなぁ…』
夕食時なのか、近くのお店から良い匂いが漂ってくる。
『お腹減った…』
先程から何度も往復した道で足を止め、流れる車をぼんやり眺める。
ヘッドライトが暗くなった路面に反射していた。
…エースはどこにいるんだろう。知らない土地で私みたいに不安になっているんじゃないだろうか…。
その時、救急車がけたたましいサイレンを鳴らして通り過ぎ、近くの料理店で止まった。
「どいて下さーい!!」
「患者はどこですか?」
ストレッチャーを持った救急隊員が忙しなく店に入っていく。
…事件でも起こったのかな。
野次馬が店を取り囲んでいる。
「急に倒れたんだってさ」
「この時期だし食当たりじゃない?」
…食中毒か、もうこのお店行くのやめよう。
エプロンを付けた店主が青ざめながら隊員に何か説明している。
ガラガラと担架に乗せられた男の人が店から出てきた。
私は何気無しに野次馬の間から覗き込む。
乗せられているのは上半身裸の男。
…いくら夏だからってあの格好はどうなのか。男前なのに非常識なのが残念だ。
…顔はタイプなのに…ん?顔…?
目を凝らして見た顔には、見覚えがあった。
『エース!!』
突然叫んだ私に周りの野次馬の視線が集中する。
『……あ……』
救急隊員がそれに気付き近寄ってきた。
「貴女、彼の知り合いですか?」
『あ…まぁ一応…』
「食事中に急に倒れたようです。とにかく一緒に乗って下さい」
『え…あの…』
隊員は戸惑う私の腕をとり、担架の近くまで連れて行く。
顔を覗き込むと端正なパーツは微動だにしていない。
…まさか死んでないよね!?
頬に手を遣ろうとした瞬間、もの凄い勢いで起き上がった。
「……ふぁーあ、よく寝た。あれ、お前確か…名無しさん?」
『え…?寝…て…?』
周りの唖然とした空気を感じる。
「……………」
「……………」
恐ろしくて周りが見れない。
「……………」
「……………」
「……………」
私は体を折り畳むように頭を下げた。
『お騒がせしましたーー!!』
ニカニカ笑っている能天気な人の手を掴むと脱兎のごとく駆け出した。
「うわっなんだよ!…まだ食いかけ…」
『いいから黙って走れ!』
夏真っ盛りの夕闇の中、ネオン煌めく繁華街を半裸の男と汗だくの女は走り抜けた。
.