Rainbow 7
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ローの背中がたまに人混みに掻き消される。
市場のせいか、人の数がハンパない。
『…ちょっ、待っ…』
さっきまでチラチラと垣間見えていた藍色の頭が、完全に見えなくなった。
『………ハァ……』
はぐれない様にと捕らえる手も、今は無い。
私は諦めて立ち止まった。
『…何がダメなんだろ』
自慢じゃないけど社交性は有る方だ。人見知りだってしないし嫌いな人もあんまりいない。人間関係でこんなに悩んだのは初めてだ。
『最近意味分かんないんだよなぁー』
私が怪我して行動を監視される様になってから、ローの機嫌は山の天気だ。
『…正直、疲れる…』
人のご機嫌伺うのなんて苦手だし、性に合わないんだよね。
「…アブない人みたいだから、止めた方がいいよ、名無しさんチャン」
突然耳元で聞こえた声に、ヒッ、と悲鳴を上げ首を竦める。
「……独り言、多過ぎるよ」
…この声、このイラッとする口調…絶対そうだ。
私は前を向いたまま微動だにせず、息を潜めて手に力を込める。
『…逃げんなよ…』
言うや否や、耳元にある頭にヘッドロックをかます。
『…あぁ!』
またも空気を掴んだ腕は、虚しく自分を抱きしめた。
…恥ずかしい…そして屈辱。
「積極的なんだね。そういうの嫌いじゃないけど」
『何のつもりだよ!おちょくってんの?』
振り向きざま噛み付かんばかりに叫ぶ。
目に入った黒いハットの男はやっぱり思っていた通りの人物で…。
相変わらず薄笑いを浮かべた口元は不気味に歪んではいるが、周りの喧騒のせいか以前程の恐怖感は感じられなかった。
「シー…、静かに。やっと一人になるの待ってたのに見つかるだろ」
一歩間を取った男は、やはりそこしか見えない口元に、指を当てて言う。
「かなりご執心だね、トラファルガーは」
『何が!あんたね、いつもいつもまどろっこしいんだよ。目的を言いなよ!』
「…怒るなよ。悪かったと思ってるよ」
そう言うと黒いスーツのポケットから、あの小ビンを取りだした。
手を出して、と言われ男の前に恐る恐る手の平を差し出す。
コロンと一錠、転がった。
「もう仕事は終わったから片道分だけ。それを飲めば元の世界に戻れる。この世界とは永久にお別れだ」
『…………………ッ…』
言葉にならない嬉しさが込み上げて来る。涙腺まで緩みそうだ。目の前のコイツにお礼を言いそうになって止めた。それは違う。
そうだ、帰る前にご機嫌が急降下しているローにも挨拶くらいした方がいいよね。あと、クルーにも。
帰れると決まって有頂天になり、ローとの険悪な空気も余り気にならなくなってくる。
心に余裕が生まれたのか、男が発した言葉が引っ掛かった。
『…ねぇ仕事って、何の事?確かこないだも言ってたよね』
「あぁ…君の行動がトラファルガーを生かしたんだよ」
『えっと…それってどういう…』
「…そうだね、訳も分からず巻き込まれてハイ帰れじゃ納得できないよね。…深くは話せないけれど、俺は彼を助けたかった。だから君を呼んだ」
…今のは説明なんだよね。
話の筋が全く分からない。やはりローの言う通り私は理解力が無いんだろうか。
「……ま、帰ってからユックリ考えなよ」
ポカンとした顔をしている私に何かを察したのか、彼は苦笑しながらそう言った。
それもそうだな、と流される私は結構単純なのかも知れない。
男はハットに手を遣り深く被り直すと、さよなら、と告げる。
同時に彼の体は透けだした。
『………っ…』
二回目でも慣れるモンじゃない。コイツ何者なんだ、ってソレも聞きたかったのに…。
「…あぁそれと、トラファルガーには黙って帰りな。彼はきっと君を逃がさない」
そう付け足すと男の姿は完全に消えた。
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