Rainbow 7
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「…お前、行きたい所や欲しい物は無いのか?」
『特に無いよ』
服飾品は多分却下されるでしょ、他は大体船に揃ってるし…。
でも待てよ、欲しい物聞いて来るって事は、もしかして私をこの街で降ろすつもりなのか?
『…お願い事ならある』
「何だ?」
『…私、暑いの苦手なんだよね』
「それがどうした」
『この島で降ろされるのは嫌』
「…………は?」
『住むならもっと気候の良い所がいい』
「……何の話だ」
『だから降りる島の話…
「ふざけんじゃねェ」
ピシリと空気が凍る。
トレーを持って近付いた店員が震える手でグラスを置き、逃げる様に去って行った。
「…お前は離れねェと言った。嘘を吐いたのか」
…確かに“離れるな”の言葉に“分かった”と言った、いや言わされたけど、それはあの島で勝手に場を離れた私に対してで…
氷点下の瞳で睨むローに萎縮しながら、私は何かが激しく噛み合っていない事に薄々気付き始める。
『あの…ロー…』
「お前は一体何を考えている」
いや、そっくりそのまま返したい。
「船を降りる必要は無いと言った筈だ。降りてェのか」
『…降りたくは、無いよ』
やっぱりお互いの思考がちぐはぐだ。一番大事な部分がズレてる気がする。
「なら俺から離れてェのか」
『…そういう意味じゃない。言葉を取り違えてたの』
「…理解力がねェのか。救い様のねェ阿呆だな」
『ハァ?元はと言えばあんたの言い方が悪いんじゃない!言葉足らずなんだよ!!』
思わず叫んだ私に周りの客がシンとする。
…凄く視線が痛い…。
あーぁ、いつもこうだ。口を開けば厭味か喧嘩。こんな事がしたい訳じゃ無いのに。
『……ホント私達合わないよね』
「………………」
身じろぎもせずこちらを睨み続けるロー。
その表情からは、もう何も汲み取る事が出来なかった。
「………宿へ行く」
ローはそう言って席を立ち、テーブルに札束を投げ付けた。
反動でグラスの液体が跳ね、テーブルクロスに黒い染みを作る。
その荒い動作に怯えながらも、この空気から解放される事にホッとした。
…早く行って下さい。もうここでお別れでいいから。
天井で回っているシーリングファンをじっと見つめる。
手元で氷がカラン、と鳴った。
私の横を通り過ぎた靴音は、しばらくして止まった。
「…何をしている。早く来い」
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