Rainbow 7
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頬を掠めたヴェールが甘い柑橘系の香りを運んで通り過ぎた。
『…良い匂い』
振り向けば、肌を惜しむ事無くさらした若い女性が二人、はしゃぎながら遠ざかって行く。
私の手首を掴んでいたローが歩を緩める。
「ナノハナは香水が特産らしいな」
『……へぇ…』
「買ってやろうか?」
口角を上げながら言う。
もう機嫌は治ったのか、楽しそうに見えなくもない。
『…別にいい』
適当に返事をしながら辺りを見渡した。
港街に着いた時は沢山のクルーと一緒だったのに、一人二人と減ってゆき、最後まで残ったベポはペンギンに引っ張られてどこかへ消えた。
『…それにしても、あっつい…』
遮るものの無い太陽は、灼熱で大地を焼きつける。見てる内に目までやられそうだ。
「この先で休む。もう少し我慢しろ」
そう言うと、ローは足早に歩き始める。
…女の歩調に合わせる事が出来ないの?悔しいけどあんたの長い足に合わせると小走りになっちゃうんだよね。
それに何、この手。まさか繋いでるつもりじゃないよね。跡が付きそうなほど手首をガッチリロックされてるんだけど…。
これが違う男とならデートなんて甘い言葉で表せるけど、今の状態はまるで移送だ。
溜息をつきながら無言でローの背中を見つめる。
この暑さのせいか、さすがにモコモコ帽子は被っていない。
「…ここに入るぞ」
爽やかな水色のステンドグラスのドアを開けると、真っ白な店内が目に入った。
壁も白、テーブルもソファも白。
この空間に居るだけで熱が体から引いていく気がする。
私は開け放した窓から駆け抜ける風に目を細めた。
『気持ちいーね』
「気に入ったか?」
『うん!』
満面の笑みで答えた。外の気温が嘘みたい。
「…そうか」
ローはふっと笑った。いつもの皮肉な笑みじゃなく、ごく自然に、だ。
驚いて動きを止める私を置いて、ローはツカツカと店の真ん中に行くとソファにどかりと腰掛ける。案内役であろう店員が慌てて近寄ると、ローは勝手に何か注文した。
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