Rainbow 6
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最近更に隈が増えた船長を前に、俺は窮地に立たされていた。
理由はもちろん、昨日頼まれた名無しさんの指令を真面目に遂行しようとしているのだが、この不快感を露にする男の前で、事もあろうか萎縮してしまう。
「用があるなら言え」
「あぁ…」
どういう風に切り出せば彼の琴線に触れないのか。殊に繊細な件なので余計に言い方にこだわってしまう。何せ、彼の遅れて来た思春期には出来る事なら応援したいのだ。
「早くしろ」
小刻みに机を叩く節くれ立った指に、俺は無意識に顔をしかめてしまう。恐らく今部屋に一人でいる彼女を気にしているのだろう。
常に一緒に居るのは知っているが、これは確かに酷いかもしれない。彼女の心情も伺える。
意を決し言葉を発した。
「…名無しさんの事ですが」
ぴたりと耳障りなリズムが止む。
漏れ出た少しばかりの敵意に心の中で溜息を吐いた。
「…あまり縛り付けるのは可哀想かと…」
「口出しするな」
ほらな、言っただろう名無しさん。この男を懐柔するなんて神に等しい奇跡なんだ。
俺は脳細胞を総動員し、何か策はないかと光の速さで考える。
船長に勝てるもの…
そうか…!
「…名無しさんは、自由が無くてストレスが溜まっているようです」
彼の顔が一瞬歪んだのを見逃さなかった。
「お前が何故そんな事を知っている」
この反応も予想の範囲内だ。
「……船長の目を盗んで“俺に”相談しに来ました」
形の良い眉がピクリと歪に動いた。もはや向けた敵意を隠そうともしていない。
「ずっと籠に閉じ込めてると、逃げ出しますよ」
ガタリと大きな音を立て、船長は立ち上がった。
無表情に見えるその顔が実は強張っている事を俺は知っている。
「…次の島は治安が良いとは言えないが、停泊する港は平和で賑やかな街のようです。連れて行ってやると喜ぶのでは?」
アラバスタで名無しさんを船から降ろす事など、はなから頭に無かったのだろう。少し思案するような表情をした後、考えておく、とだけ言い船長は測量室を後にした。
俺は偉業を成し遂げた事に感極まり、固く両手を握り締める。
戦闘では策士として尊敬しているが
…恋愛に関してはきっと俺の方が上だ。
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