Rainbow 5
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私は何故か、ぶつかったオジサンと大通りのオープンカフェに居た。
椅子に掛けたコートの文字が気になる。"正義"だなんて凄いセンスだ。
「姪っ子が居てねぇ」
『…はァ…』
「雰囲気が君に良く似ている。丁度君位の年なんだよぉ」
『………はァ…』
察するに、さっき言ってた"ミネア"さんが姪っ子なのかな。
「わっしは子供が居ないもんでねぇ、亡くなった妹夫婦の忘れ形見だァ。大事に育ててたつもりなんだがねぇ」
オジサンはグラサン越しに通りをぼんやりと眺めている。
「どこぞの馬の骨に騙されてねぇ…。反対したんだよ、烈火の如くねぇ」
『………ほォ…』
「…男を追っかけて島を去るあの子に投げた言葉が"戻ってくるな"だったんだよぉ。思ってもないのにねぇ。ミネアは本当に悲しそうな顔をしてたさ」
そこまで言うと話を区切り、胸ポケットから葉巻を出して、ジッポでカチャリと火を点けた。
オイルの香りが、どこからか懐かしさを連れてきた。
「………………次に会った時には息をしていなかったァ」
ぎくりとしてオジサンを見ると、流れる人波を見ながら葉巻をくゆらせていた。
「この島にね、眠ってるんだよォ…。妹夫婦と一緒にねぇ…」
グラサンで見えないけれど、泣いてるんだと思った。
この人は、涙を流さずに泣いてるんだ。
「名無しさんちゃんと言ったかなァ。君も、大切なものがあるのなら後悔してはいけないよ。次に会う時には温かいままとは限らないさねェ」
『おサルさ「黄猿だよぉ!」
『きサルさん、ミネアさんは悲しかったんだよ』
「そうだろう、ねぇ…」
――“フラフラするな”――
『自分が不甲斐無くて、悲しかったんだよ』
――“警戒しろ”――
『ちゃんと見ていてくれる人に、報いれなかったから』
――“そんなんで生きて行けんのか?”――
『掛けられた言葉の真意だって分かってた…。きっと最期に会いたかったのは貴方だったよ』
「………………………」
『……誰よりも心配してくれる人だったもの』
黄猿さんは不自然に俯いていた。
彼の震える肩に手を置こうとしたその時
「名無しさんーーー!!」
ドタドタと近付いてくる地響きがした。
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