Rainbow 1
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その日も、何て事の無い一日だった。
ただ、敢えていつもと違う所を探すなら、先程窓から見えた夕日が血の様な赤だった事だろうか。
俺は、ぼんやりと視線をテーブルに移し、無造作に積まれた本の山に溜息を吐く。
先程から迫り来る睡魔にとうとう諦めて医学書を置き、ソファに体を沈めた。
仕方ない、ここ最近寝た記憶が無いからな。
クルー達は睡眠を取れと口煩く言うが、生憎俺にとって寝る行為は、時間の無駄としか思えない。
その間、何冊の本が読める?どれだけの知識を詰められる?
ああ、あと数日で次の島に着くんだったな。新しい医学書を買い足さねぇと、もう読む本がねぇ。
朦朧とした意識の中、そう考えている時だった。
--ドタドタドタドタ
バンッ!!
「キャプテン大変!」
不快な程、荒い動作でドアを開けた白熊。
「……ベポ、バラされるのが、そんなに待ち切れねぇのか」
「あ、あわわ、違うんだ!本当に一大事なんだよ!」
「…大した事なけりゃ、分かってんだろうなァ?」
「し、侵入者なんだ!」
「なんだと?」
見渡す限りの大海原。前の島を出てから二週間。どこにそんな機会があるというのか。
「チッ。能力者か」
「分からないよ。気絶してるんだもん」
早く早く、と急くベポに連れられ甲板に上がれば、クルーが皆船尾に集まり騒然としている。
輪の中心にいるキャップの男ーーペンギンが、俺に気付き振り返った。
その顔には珍しく動揺が浮かんでいる。
「何があった」
俺の声に一斉に振り返ったクルーも皆、顔に困惑の色を浮かべていた。……ただ一人を除いては。
「せーんちょー!ちょっと聞いて下さいよ!マジでスゲェんすよ!こいつ、突然…………!!!」
興奮した声を遮る様に鞘から剣を引き抜けば、途端に声の主、シャチは押し黙った。
クルーはぞろぞろと左右に分かれ道を作る。
「……うるせェ…」
剣の腹を肩に乗せ、クルーが開けた道を大股で歩く。
視線の先には横たわる人間…女がいた。
露出度の高い衣服から放り出された細い手足。乱れた鳶色の長髪の隙間から、小さな顔が覗いている。
息はしているのだろうか……ピクリとも動かない。
その時、一筋の風が甲板を通り抜け、女の顔に被さる髪を払った。
宵闇に薄く光りだした月が、その顔を浮かび上がらせる。
俺の足は無意識に、動きを止めた。
「船長……?」
訝し気に掛けられた声にハッと我に返る。
「…………………チッ……」
胸元を鷲掴む
この動悸の理由は、いつもと違う日常が現れた……ただそれだけだ。
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