Rainbow 3
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甲板に行くと、シャチが船尾の方で釣り糸を垂れていた。
「おー名無しさん!お前もやるか?」
『うん!やり方分かんないから教えて』
シャチの隣に座り、予備の釣竿を渡してもらう。
『うぇー気持ち悪いよこの餌』
どっちが頭かお尻かも分からない、手の平程の黄色い幼虫を突き出される。
「何言ってんだ。今朝お前が食ってたやつだろ。ほら、ここに刺すんだよ」
そう言って先っぽにぐいぐい針を突き刺すシャチ。今、死にたくなる台詞が聞こえた気がする。
『…こんなに大きい餌だと、釣れる魚も大きいんだろうね…』
「まぁー海王類なんかはそう釣れねーけどよ」
そう言って釣竿を持ち直すシャチは、水平線を見つめている。
「……あのよ……」
『?なに?』
「お前さ……本当に船降りるのか?」
『え?モチロンそのつもりだけど』
「……それ、首…。やっぱ船長とそういう仲なんだろ?…あの人がそんなモン付けるの初めて見た」
私は咄嗟に首を手で隠す。今更遅いけど。
『何もしてないよ!コレは嫌がらせで付けられたの!』
「お前、鈍そうだもんな」
『はぁ?何が?』
「船長はさ…」
そう呟くと、言い辛そうに言葉を濁すシャチ。
「何なの、ハッキリ言いなよ気持ち悪い」
「………気持ち悪いって酷くねぇか。……イヤあの、船長が女をずっと側に置くなんて有り得ねーからさ」
それはつまり、私が気に入られているとでも言いたいんだろうか。それこそ有り得ない。今までのあの悪辣な言動から、どうしてそんな発想になるんだろう。
『ねぇ、シャチそれはさ…』
勘違い……と続く言葉は最後まで紡げなかった。
――-―ドォォーーン!!!――――
船体が揺れ、海水が飛び跳ねる。
私は持っていた釣竿を手放し、両手を床に付けながら体ごと数メートル滑った。
「海王類だーー!!」
つんざく様なシャチの大声に、訳も分からず身を縮こまらせる。
恐る恐る振り返り、目に入ったのは、大きく開けた口から覗く鋭い牙。鱗に覆われた太い首が右に左に蠢いている。
なにこれワニの怪物!?冗談じゃない!!
―――――ドガッ!!――――
また船体が大きく揺れる。
視線を向けると、尻尾のような物が欄干をぶった切っていた。
『シャ、シャチ…これ…』
「お前は船長を呼んでこい!!」
至極真剣なシャチはそう言うと、脇から短銃を取り出した。
『わ、分かった!』
四つん這いの不格好な体を奮い立たせ、震える足で床を踏み締めた時だった。
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