Rainbow 3
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…………………
近づいてくる軽い足音に顔を上げた。
こんな聞き慣れない音を出す奴は今、船に一人しかいない。
……ペタペタペタペタ
--ガチャ
チッ、やはりノックもせずに開けやがった。
俺は扉に背を向けたまま、卓上の試験官を手に持つ。
「何の用だ」
『………………』
何も喋らない名無しさん。今日はこのやり取りを繰り返している気がする。いい加減うんざりだ。
「用が無いなら行け。邪魔だ」
『………ベポにここに居るって聞いて……あの、夕飯…お腹空いてたから助かったよ』
「あァ」
それと、と繋げながら言葉を濁し、中々切り出そうとしない。
俺は手に持った試験官を机に立て、ハァー、と重い溜息を吐いた。
『……あっあの!さっきはごめんね!怒ってるよね…寝ぼけてあんな事。忘れてクダサイ』
俺が苛つく理由は別の所にあるのに、コイツは何か履き違えている。
“間違えたんだよ!”
そう言って、何度も口を拭ったコイツ。
間違えただ?誰と。
口を拭う程、俺が嫌か。
「あァ、忘れてやる。もういいだろう、部屋へ戻れ」
『ローは、戻らないの?』
やめてくれ、お前の顔なんか見たくない。
『私、今日はソファで寝てもいいから、部屋に居て』
やめてくれ。
『あと…それと…昼間、ローに言われた言葉で元気が出たから……ありがとう!』
ペタペタと足音が遠ざかって行った。
掻き乱されるような胸の痛みに眉間に皺が寄る。
こんな感情、俺は知らない。
知りたくなんぞ、無い。
卓上の器具を片手で払い落とすと、派手な音を立てて破片が床に散乱した。
---俺達は目指す物に真っ直ぐ向かって行く。そうでしょう、船長--
ペンギンの声が頭に木霊する。
分かっているさ。
約束を違えるつもりは無い。
分かっている。
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