Rainbow 12
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街を闊歩するローの後ろ姿を間隔を空けて追う。
が、やはりそのペースに付いて行くのは必死だ。
…くそっ足の長さの差か…!
急ぎ足でリーチを縮める。
…何でコソコソ追いかけてんだろ…でも今更一緒に行きたいだなんて言い出し辛いじゃん…!
『……あ!』
…やばい、一瞬考え事しただけで見失った!
気付けば特徴的な後姿は掻き消えている。
『…瞬間移動も使えるのか?いや、どこか店に入ったのかな』
通りには意外と開いている店が多かったが、書店は見当たらない。となれば、どこに入ったのか検討も付かない。
『……あーあ。私、何してんだろ』
急に虚しくなって、近くの店先に腰を降ろした。
ハァ、と溜息を吐くと、膝を抱えて頭を乗せる。
ローの、あの苛々した顔を思い出して、やり切れなくてまた溜息が出た。
『…また不機嫌になっちゃった』
いつもいつも思い通りにいかない。
どんなに経験を活かしても、どれだけ頭を振り絞っても、ローの扱い方が全く分からない。
勇気を出して迫ってみても、逆に警戒されてしまったし…。なのに私、めげずにローの後を追い掛けてるなんて…。
『………』
しつこい女、だよね……。
正直、今までこんなの格好悪いって思ってた。
女は追い掛けられてこそ価値が出る、そう信じて生きてきた。その通りに、今まで周りの男は私のご機嫌を伺い、いつもチヤホヤしてくれた。
でも、その男達とローとは根本的に何かが違う。
『…何が違うんだろう…』
…分からない。そもそも相性が合わない男を何で好きになったんだろう。これからローを知っていけば理由が分かるかもしれないけど、そんな“理屈"じゃない気もする。
『あーもう…』
頭を抱えて蹲った。
知りたいと思えば思うほど、ローが遠ざかっていく気がする。
好きだと自覚した途端、急速に高まる熱に自分が怖くなる。私とローとの足並みは、ちゃんと揃っているんだろうか。
……いや多分、私の方が…
突然、背後でガチャリと音がした。
驚いて振り返ると、扉の前には仏頂面のローがアイスを片手に立って痛…居た。
『ゴメン!』
見てはいけない物を見てしまい、咄嗟に前を向いて謝る。
「あァ?」
『いいと思う…その人相で舐め回しても別に…』
「……お前、勘違いしてんじゃねェ」
ほら、と少し屈んだローは手に持ったアイスを私に差し出す。
『私に?何で?』
「…宿を出た時から気付いていた」
私は無言でアイスを受け取る。
…ほら、ずるい。
自分で突き放しておきながら、そうやって結局は構うんだよね。
ローは馬鹿だよ。全然気付いてないんだ、それが私を狂わせること。
顔が熱くなって、視線の置き場を探す。けれど、どこにも見当たらなくて仕方無く下を向いた。
「俺を追って来たのか?」
『…………………』
…気まずくて何も言えない。絶対変な女だと思われてる…。
ローはもう怒ってはいないのか、いつも通りの無愛想な口調…いや、なんだかいつもより声のトーンが上がっているような…?
フッと苦笑めいた吐息がする。
「食わねぇと溶けるぞ」
『…食う…』
ちらりと手元を見れば、コーンに垂れそうな水色の液体。チョコを散りばめたその食べ物をひと舐めすると、ひんやりと甘くて少しほろ苦かった。
…どんな顔してこれを一人で買ったんだろ。
想像すると、何だか可笑しくて笑いが零れた。
「…どうした。俺と居たくねぇんだろ?」
『…違う!』
焦って顔を上げると、ローと視線が合う。
呆れた顔して、けど少しだけ上がっている口角は、確か機嫌が良い時の表情で…。
『…私も一緒に行く』
「そうか。ならお前に読める絵本でも探してやる」
アイスを持った手首を掴まれ立ち上がると、ローは私の指に垂れた液体をぺろりと舐めた。
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