Rainbow 14
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『………ひっ……』
慌てて手を放すと、ウサギの顔はゴトンと音を立て、ゴロゴロと転がっていく。
頭は側にあった木に当たり、上を向いて止まった。
『な……なんで……どうしちゃったの…』
這いつくばり、そろそろと近くに寄る。
白から土気色に変色した毛は、生き物の様にびっしり蔓延り、目や鼻や口…あらゆる穴へと入り込んでいる。
少し覗いた眼球は、最初に見た黒く濡れた瞳など嘘かと思うほど、血の色をしていた。
『……幻…覚………?』
…さっきまで彼女の為にあんなに必死で駆けてたのに…
離れた胴を見遣る。
黒ずんだそれは厚みを失い、敷物みたいに地にぺったりと張り付いていた。
『…もうどれが現実なのか分かんないや…』
その場にへたり込むと茫然と空を見上げた。
霧に包まれていたはずの上空はいつのまにか雲一つ見えない。
木々の間から僅かに差し込む朝日が、この物々しい雰囲気と裏腹に明々と昇って行く。
その眩しさに目を細めれば、どこからか鳥肌が立つ様な叫び声が聞こえて来た。
「……う゛…あ゛…あ゛ぁぁ…」
ハッとして我に返る。
…今の、ゾロの声に似てなかった…?
『ゾロ!!どこ!?』
焦って辺りを見渡す。
周囲は森に囲まれた一本道だ。
進むとすれば、この先ひとつしか無い。
慌ててウサギの胴体を頭の側へ引き擦り寄せた。
初めて会った時、大きな図体を縮こまらせて主人の後ろに隠れていたヌイグルミは、今は驚く程小さく軽く、私の心の中まで空っぽにした。
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