Rainbow 14
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「…最近余り驚かないんだね」
近づいた人影は目の前で止まると、黒いハットに手をかけて、少し上げた。
覗いた口許がニヤニヤと釣り上がっている。
『驚いてるよ。このジメっとした環境があんたにハマり過ぎてて』
「辛辣になってきたね、誰の影響かな」
いつもの飄々とした調子にやはり苛つきを感じ、語気を荒げる。
『何の用!?私はもう帰らないよ!』
「そう…今の所はそれでいいんじゃない?安心してよ、俺が用があったのはあの城だ」
男は振り返ると、くいっと親指で遠くの古城を指し示した。
『…用事を終えたアンタが墓場を散歩するとは思えないんだけど…』
「名無しさんチャンの顔が見たくなったんだよ」
『不要な前フリはいいからさ、何なの?』
男はクククッと喉の奥で笑うと、腕を組み私に顔を近づけた。
「トラファルガーは止めて、エースにしなよ」
『はぁ?』
突拍子も無い発言に一瞬頭が跳びかける。
全く以って意味が分からない、この男の存在と一緒で。
『…あんたってさ、いつも突然だよね。説明とかするの面倒なの?』
「君は、知らなくて良い事なんだよ。知っちゃいけない」
『…なら話は終わりだね。私はローと一緒に居る、もう決めたんだ』
男は長い溜息を吐きながら顔を遠ざける。何故だかやり切れない雰囲気が伝わって来た。
「…ずっと側に居て、エースを止めてくれないか?もしかすると君なら…」
『……え?』
「あいつを思い留まらせて欲しいんだよ」
私は一歩後ずさった。
…言ってるのはきっとエースの復讐の事だ…。この男は何でそれを知ってるんだろう…。
急に空気が冷えた気がした。
寒気がする。
『…あんた…一体…』
ニヤリと笑う口許は一向に変わらず、何も言葉は発しない。
…聞いても、無駄って事か…
頭を振って意識を鮮明にさせると、カラカラに渇いた喉で声を搾り出した。
『…多分、エースは誰にも止められないよ…』
「……………」
あの復讐に燃える瞳…。
固く誓ったあの目は、彼を取り巻く“家族”に向けられていた。
『…だって、それがエースの守るべきものだから…』
男の釣り上がっていた口許が一瞬で解ける。その唇が少し震えた気がした。
「…そうか…そうだね…“誰からも逃げない”…」
『え?』
「何でもないよ。なら俺は行くよ…まだ救う手立てが有るかも知れないからね。…名無しさんチャンの顔が見れて良かった」
生暖かく吹いた湿った風は、男を包み掻き消した。
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