Rainbow 13
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「ねぇ名無しさん、最近夜はいつも展望台に居るわね」
ナミにそう言われて考えてみる。最近天候が良いから、夜は星が綺麗なんだよね。
「ゾロも…居るわよね」
『あぁ、うん。もうあそこ住家にしてるじゃんあの人』
ナミはレジャーテーブルに肘を突き、ストローでグラスを掻き混ぜると、溜息を吐いた。
眠りを誘う麗らかな陽光の下、潮風がミカンの甘酸っぱい香りを運んで来る。
…あー眠い…。あのミカン熟れてんなぁ旨そう…。それよりナミは何が言いたいんだろ…
ふわりと柔らかい風が甲板を舞う。
伏せた瞼の上で彼女のオレンジの前髪がそよそよと揺れる。
その様子が、とても物憂げに映って……
ハッとして眠気が飛んだ。
…もしや…
男所帯ですっかりアンテナが錆びれてたけど、この感じ。
懐かしいこの雰囲気は、恋バナってやつじゃないのか?
パン!と勢い良く手を合わせると、頭を下げる。
『ごめんね気付かなくて!』
「……………」
『最初に言ってくれたら、ゾロなんて空気扱いしたのにさ!』
「……………」
両手をテーブルに付くと、ナミに顔を近づけた。
「…で、あの脳ミソきんに君のどこに惚れたの?」
熱い想いを抱えた筈のナミは、私に冷ややかな視線を向ける。
「…あんた、それ以上私を侮辱したら海に落とすわよ」
『え?好きなんでしょ…ゾロの事』
「んなワケ無いでしょ!それに、万一気が狂って惚れてたとしたら、さっきの言葉は失礼よ!」
『…ナミも結構…』
「そんな話じゃ無いのよ、もっと真面目な話…」
そう言うと、グラスの水滴を指先でなぞる。
「ゾロに…恋人が居たのは知ってる?」
『……ミネアさん…だよね』
「聞いてるのね。じゃあ名無しさんに似てたって事は?」
私は黙って頷く。
それは黄猿さんも言っていた。それに、ゾロに最初に会った時のあの反応。絶句して言葉も出ない様子だった…。
ナミは私の手首に視線を移すと、眉を下げた。
「…あまり思い出させない様にしてあげて。ミネアの事は………」
そこで言葉が途切れ、ナミは口を手で覆った。伏せた睫毛に零れた涙を見て、彼女の末路をゾロから聞いたんだと思った。
…ゾロは、私にミネアさんを被せてるのかな…。
私がふいに不安になる時、いつもゾロはぶっきら棒に話し掛けてくる。
タイミングが良いと思ってたんだ。
…敏感になってたのかな。私の表情に、この顔に。だから放って置けなかったのかも知れない。
もしかして私を船に乗せたのも、彼女を救え無かった分、今いる私を救いたいと…そう思ったのだろうか。
それで彼の心は満たされるのかと考えれば、何かが違う気がする。
ありきたりで他人事な言葉だけど
“思い出にする”
…それが一番良いのかも…。
『私…無神経だったね…』
手首に巻いたブレスレットを触る。
「名無しさんが悪いんじゃないわ。偶然だもの」
ソッと目尻を拭った彼女の顔が、白くぼやける。
…あれ?
目を擦ってみても、やはりぼやける。
『…おかしいな。何だこれ…』
「霧だわ。凄く濃いわね…」
辺りを見渡す彼女の目が、ある一点で大きく開かれた。
震える指先で斜め上を指すと、ガタリと椅子を蹴り立ち上がる。
私はテーブルに落ちた大きな影を不思議に思い、空を見上げ…
息が止まった。
…何、あれ。
「…ゴースト・シップよーー!!」
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