Rainbow 11
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…………。
あれ、何で?私いつの間に引き上げられたの?
お尻にひんやり石の感触がする。
あのタヌキのお陰かな。
タヌキ…あぁ…あのモフっとした毛、どんぐりみたいな目、かぁーわいかったなぁ。
まだ近くに居るよね。どこだろう。
キョロキョロと辺りを見渡す。
ありゃ?人っ子一人見当たらないな…いや、一人居る…ひとり…あ…れ…は…
「…チッ…鈍臭ェな…」
ツカツカと近づく長い足。それが目の前で止まる。
この見下した口調、ぞんざいな態度、顔を上げなくても間違えはしない。
今、一番会いたく無い人物…
『………ロー…何で…』
呆れ果てたような溜息が聞こえる。
「何故、避難しなかった」
『……………』
「心配かけさせんじゃねェ」
…心配…?
私の事なんて本当は何とも思ってない癖に。
どうせそれも口だけなんでしょ。
そうやってローは私を馬鹿みたいに一喜一憂させるんだ。
私はフイっと横を向く。
もう話なんてしたくない。
『…どっか行ってよ』
「………何言ってやがる」
『ムカつく。消えて』
周りの空気が冷えていくのが分かる。
降ってくる威圧感が半端ない。
「……お…まえ…」
低すぎるトーンが腹にズシリと響く。しかもちょっと声が震えてる。これはやってしまったかもしれない。今、青筋立ってるどころか何本か血管切れてるんじゃないか。
けれど、もうここまで言ったら止まらない。ドロドロした物を全部吐き出してしまいたい。
『私じゃなくて他の女んとこ行けばいいじゃん』
「………………」
『ローなんて居なくなれば、こんな思いしなくて済むのに!』
頭上から風が舞う。
…殴られる!!
咄嗟に腕で顔を庇うと、近づいた両手は予想に反してふわりと肩に添えられた。
ローは膝を折り、私と距離を縮める。
『………いやっ…離して…』
ピクリと小さく反応したローは、しかし私からは離れていかない。
発した言葉とは裏腹に、置かれた手は振り払えなかった。
その手は怖くも何とも無くて、むしろ
……心のどこかで、もっと触れていたかった。
「…お前、本気で言ってるのか」
ぽつりと頭上から呟きが落ちる。
私の目線には、ごくりと大きく上下した喉仏と、滲んだ朱い跡があった。
『…嫌い…』
肩に置かれた手がゆるゆると下がる。
深い溜息が髪を撫でた。
『…だって…』
目頭が熱くなる。鼻から何か垂れてくる。
目の前の服を引っ張って、顔に強く押し当てた。
『他の女抱く位なら、あの時ムリヤリでも抱かれた方がマシだった!!』
「…名無しさん!」
…息が、止まるかと思った…。
きつく、きつく抱きしめるローと私に隙間なんて無い。
ローの香りと僅かに漂う汗の匂いに力が抜けて、肩に頭を預ければ、互いのピアスが擦れて鳴った。
「…俺は今、勘違いしてンのか」
首に掛かる熱い吐息に背が弓なりにしなる。
「お前が…妬いてる様に見えるんだが」
『や…や…妬いてなんか…』
顔に熱が集中する。
勢いに任せて何て事言ってしまったんだろう。
…妬いてんじゃない…そんなんじゃ…
ローの首元をもう一度見る。
やはりそこには小さな花が咲いている。
『だってこれ…』
「女は抱いていない」
『嘘だ…!……わっ…』
ガクンと傾いた体が力強い腕に支えられる。
ガラガラと音を立てて橋の縁石が崩れ落ちていく。
「行くぞ」
私の手首を握り締めたローは、一度顔を覗き込むと鼻で笑い、足早に階段を昇った。
私は空いた手で未だ熱を持つ顔を隠した。
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