Rainbow 11
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余程意外だったのか、目と口を開け放し間抜け面をしている。
私は口を尖らせた。
『海賊じゃないよ。お世話になってるだけ』
「なら、どこかで船を降りるんじゃねぇかよ」
言われてふと気付く。船を降りなくても、この世界の人間じゃない私は、またいつ元の世界に帰るのかも分からない。未来の事なんて軽々しく口にしない方がいいのかも…。
『…じゃあ、時間が許す限りは協力するから』
「あぁ、ありがとよ」
カウンターに頬杖をついて考える。
…いつか居なくなるかもしれない。
そんな女なんて、本気で好きになるのかな…。
屋根を叩く雨が一際強くなった。
表で窓に板を打ち付けていたマスターが戻って来た。
「お客さん悪いね。そろそろ閉めるよ。あんたらも早く高台へ避難した方が良い」
ゾロはカウンターに紙幣を置き立ち上がる。
『これ…』
その場に置かれたままのブレスレットを差し出す。強く握りしめられた温もりが残っていた。
「…名無しさんが持っててくれ」
『でも、大事な物なんでしょ?』
「俺があいつに贈った。それはずっと変わらねぇ…だからいいんだ」
私は手元に視線を遣る。輪の表面に花の細工が施してあるそれは、明らかに目の前の男には似つかわしく無い。
何を買えば良いのか困り果て、きっと恥を忍んで店員に選んで貰ったのだろう。
想いを込めた贈り物が返って来るのは、虚しい事だ。
『…じゃあ、私が持っておくね』
「あぁ…そうしてくれ」
そう言って、ゾロは少し口角を上げた。
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