Rainbow 11
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
……………………
「無理矢理船に連れ込んだ。あいつは強ぇからな…仲間は喜んだ」
男は力無く背もたれに沈む。
「…それが結果的に誤った判断だった。…島にいれば安全だったのに…。殺したのは俺みてぇなモンだ」
『…どうして…離れたの?』
「航海して何ヶ月だったか…嵐の日に船が海軍に囲まれたんだ」
男は腕を組むと、忌ま忌ましそうに鼻にシワを寄せる。
「ルフィ…うちの船長も深手を追ってな。ギリギリの戦いの中…あいつは言ったんだ」
苛ついた舌打ちが二人しか居ない店内に響く。
「…この海軍は自分が呼んだんだ…ってな」
『嘘よ!』
「わかってらぁ!俺らは誰も信じちゃいねぇよ!」
『なら何で…』
「…そこで一味を抜けると言うアイツに何が言える?」
『…………』
「大将の姪が居ると騒ぎだした海軍に、アイツは付いて行った……まるで取引だ」
『…なんで引き止めなかったの…』
「俺の女の前に船のクルーだ。最低限の規則は守らないといけねぇ」
『……規則…?…』
「船に乗りてぇっていう意思だ」
…口で言う言葉が全て意思なのだろうか。
それは違うと思うけど、彼女は一旦出した言葉を翻す事は決してしなかっただろう。
…恐らく、仲間の為に。
「アイツは俺達に言ったんだ。叔父の所に帰りたい、ってな…」
『…待って!じゃあ海軍に連れ去られた後で彼女は亡くなったって事よね!それじゃあ彼女が死んだのは…』
男はギリギリと唇を噛み締める。
線の綺麗な顎に血がじわりと滲んだ。
「…分からねェ…言っただろ、あん時ゃ酷ぇ嵐だった。海が凪いだ後にアイツの乗った海軍船を追ったが…行方どころか情報まで全て消え失せていた」
『…でも…黄猿さんは亡くなったミネアさんを見てる…故郷にお墓もあって…これが手元にあるんだよ…』
テーブルに置かれた華奢なブレスレットに触れる。ひんやりとしたそれは、心の芯まで冷たくゾッとさせた。
「……何かある。…俺は必ず見つける」
消えた海軍船、故郷に戻った遺体、残された遺品。
…何故、黄猿さんがこれを私に託したのか。
まるでこうなる事を望んでいたかのように。
海賊船に乗っている私がいつかこの男に出会う…そんな小さな希望に賭けたのか。その執念に縋り付く程、姪を愛して止まなかったのだろうか。
そっとブレスレットを手に取った男は目を細める。
「…コレはな…アイツに気持ちを伝えた時に一緒に贈ったんだ」
まるで愛おしむ様に手の平で包んだ。
「…女に贈りモンなんかした事ねぇ。店員が勧めるままの品に文字なんか彫られてよ」
思い出すように目をつむり、口元を苦く綻ばせる。
「…柄にも無く緊張しちまって…。でもちゃんと伝えねぇといけねぇって…」
想いを包んだ手に雫がひとつ零れ落ちた。
「…嬉しそうに笑ってたんだ…やっと言ってくれた…って…」
掛ける言葉が何も見つからない。
今、何かを口にすれば全て陳腐に聞こえてしまうだろう。
黙って震える肩を見続けた。その姿はいつかの黄猿さんと重なって見えた。
「………悪ぃな……」
袖で顔を拭った男は赤い目を伏せながら申し訳なさそうに言う。
『気にしないで…。それから、あのさ…今更だけど、アンタじゃ何だから名前教えて欲しいの』
「あぁ…言って無かったか。俺はゾロだ、ロロノア・ゾロ。お前は?」
『名無しさん。……私も調べてみるよ、ミネアさんの事』
「お前…名無しさんが…?」
『うん…気になるの。何か分かれば教えるよ。どうせまた会うんでしょ?行き先は同じだもんね』
「…あ?」
『だって、ゾロもワンピースを目指してるんでしょ?』
「…はぁ!?お前、海賊なのか?」
.