Rainbow 9
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『美味しーい!』
「ちょっとコゲちまったけどな」
『上出来上出来!だってちゃんとハンバーグだって分かるもん』
「…お前、いつも何食ってんだ…?親はいねーのか?」
『…親?どっかに居るんじゃない?』
「なんだソレ、じゃあずっと一人なのかよ」
ウン、と私は頷く。
ずっと一人…そうかもしれないな。
一人暮らしは高校に入ってからだけど。
それまでは……
施設に居た。
小学生の頃、周りの子に気付かれたくなくて、いつも遠回りして帰ってた。
中学生の時、友達がお洒落してるのにみすぼらしい恰好は嫌だと、帰るなり当たり散らして施設の人を困らせた。
高校に入り、祖母の援助でこのマンションを借りたけど、自由と共に手に入れたのは空虚な時間だった。
「…親は生きてんのに別々に暮らしてんのか」
『…事情があんじゃないの?』
…それぞれの家庭って事情が。
「…寂しくねぇか?」
『友達といつも一緒に居るし平気』
…平気…か。家に一人で居るのが嫌で外で時間潰してる癖に良く言うよ。
『しけた話しちゃったね。さ、食べよ!冷めちゃうよ』
私は大量のハンバーグだけが乗った皿にフォークを突き立てた。
「俺と一緒に来れば…」
『あっお風呂沸かすの忘れてた!』
私はエースの言葉を遮って立ち上がる。
『潮で体べとべとするよね!先に沸かしとくんだった!』
足早にダイニングから遠ざかる。
…聞きたく無い。
聞いてしまえば、彼の満足する答えなんてきっと持ち合わせてないから。
真摯な気持ちを向ける人間から逃げる、私は狡い、卑怯な女だ。
「俺と来れば……寂しい思いはさせねーのに」
伝える相手を失った言葉は、ぽつりとテーブルに落ちた。
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