Rainbow 9
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名無しさんは少し離れた砂浜に座り込んでいた。
その寂しそうな背中に少しの喜びと期待を感じてしまう。
…お前は今…何を考えてる?
「…名無しさん…」
ゆっくり振り向いた名無しさんの顔には期待に反してへらりとした笑顔が浮かんでいた。
『エース、もういいの?』
「…何がだよ…」
『女の人と居たから邪魔しちゃ悪いと思って…』
何の悪びれも無くそう言う名無しさんが憎たらしい。
何で知らねー顔すんだ。
昨日お前は女に絡まれてる俺の手を取ってくれたじゃねーかよ。
『もうお昼だね!お腹減った!』
そう言って立ち上がる名無しさんの足元に波が押し寄せ体がぐらりと揺れる。
「…あぶねっ」
咄嗟に差し出した腕にすっぽりと収まる小さな体。
ふわりと良い香りがした。
体重を乗せた腕に伝わる素肌の柔さに息を飲む。
重なる互いの体温が俺の鼓動を震わせた。
…我慢できねぇ…
衝動的に彼女を強く掻き抱く。
より密着した彼女の肉体に疼くモノが頭を擡げる。
首筋に頬を寄せると、途端に強張る名無しさんにハッとした。
「悪ぃ…」
そっと体を離すと名無しさんはまた笑った。
『…どうしたの?エースらしくないね』
…俺らしい?
何だよ俺らしいって。
聖人君子とでも思ってんのか?
俺なんて所詮どす黒い人間だ。殺してぇ位憎んでる奴もいれば、今だってお前を押し倒してぇ。
苛々した感情の遣り場も無く、一人拳を握り締める。
そんな俺に小首を傾げ、名無しさんはスタスタと歩き出す。
「…おい!」
彼女の手を掴もうとした瞬間風が吹き、その小さな手は栗色の髪を押さえた。
空を切った俺の手は
何も掴むことが、できなかった。
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