始まりは
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「え?」
俺の第一声はこれだった気がする。
そりゃそうだ。いきなり、母親から「再婚するから」なんて言われたら。
「...何、また俺を餌食にするの?」
「そんなんじゃないわ。今回の人は凄くいい人なの!きっと、あなたのことも大切に思ってくれる!」
「ふーん」
「明日には、相手の家に引っ越すから。準備しておいてね」
「...明日?いや、俺大学...単位あるし」
「それより家のことでしょう?休みなさい」
...驚きで声も出ない。
最近忙しそうにしてたのは、手続きとかの関係か...。
いや、にしても休めって...単位は大丈夫だけどさぁ...。
そんなこと言ったって、どうしようもないことを知ってる俺は、黙って荷物をまとめた。
*
次の日。
朝早くに叩き起され、9時にはもう引っ越しが始まった。
どんどん空になっていく家。
別に思い出なんてないけど(無くはないけどいい思い出はない)、空になったらそれはそれで寂しいもので。じーっと見つめる。
「...ねぇ、母さん」
「なぁに?」
「俺、新しいお父さんをお父さんって呼べるかな...」
「絶対に呼べるわ。母さんの目を信じなさい」
だから余計不安なんだって。
そんな言葉は飲み込み、一言返事を返す。母さんは毎度そう言う。「母さんを信じなさい」と。それを信じて、裏切られる俺の気持ちを少しは理解して欲しいが、母さんも母さんで裏切られてるんだもんなぁ...。
「荷物全部運び終わりました!」
「あら、ありがとうございます。さ、浩人行きましょ」
「あー、うん」
引っ越し業者さんの後に続いて家を出る母さん。俺は、持ち主の居なくなった部屋を見つめて頭を下げ、家を出る。
「大家さん、お世話になりました~!」
「うちこそ。にしても、寂しくなるねぇ。また、いつでも顔だしてね!浩人くんも!」
「はい。」
「じゃあまたね。元気でね」
「大家さんも、体には気をつけて。旦那さんによろしくお伝えください」
「ふふふっ、本当によくできたお子さんだねぇ。あ、飴あげる」
「ありがとうございます」
お世話になった、大家さんに大量の飴を頂きそれを大切に持っていた鞄の中にしまう。
そしてもう1度、お礼を言って母さんと車に乗り込む。
車に乗り込んでもなお、外で手を振ってくれる大家さん。俺も、姿が見えなくなるまで手を振り返した。
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