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夕闇は道たづたづし 上

夕闇をゆっくり歩いている。
俺は一体──。否、俺自身が土方十四郎だというのは分かっているが此処は何処なのだろうか。何処に向かっているのだろうか。

誰も分かるはずはない。俺が何処に向かっているのかを俺自身が把握していないのだから。此処は多分──確実に夢だ。だからこんなに孤独を感じるんだ。

不意に、草木を分ける妙な音がした。
普段の俺なら腰に差している刀に手を伸ばし柄を抜き構えている。今は、そうは出来ない。何にしろ刀がないからだ。夢だからか、研ぎ澄まされている筈の直感力が機能しない。

そこから出てきたのは、若い男女と女の腕の中で眠っている赤ん坊の3人だった。

「何れは見つかる」
「ええ...もう覚悟はできてます」
「俺もさ。...この子を──
十四郎を最後まで守りきろう。」

十四郎...?聞き間違えか?

「ごめんなこんな父様と母様で...きっとこれから沢山苦労すると思う。物心ついた時にはきっと──」
「でもこの子なら大丈夫。とてもいい目をしてるもの...だからお父様のように強く逞しく生きないとダメよ」
「そして母様のように正しく健やかに。...お前は男の子だけど母様のように可愛らしい顔をしているから気を抜いたら駄目だぞ」
「それでもきっと、あなたに似るわ」
「そうか...?いずれにせよ健康に育ってくれればいい。──だがこの子も闇狼の血を引き継いでしまった。避けては通れぬ道がこれから待っているんだ...」
「それもきっと大丈夫。土方さんならきっと正しい方へ導いてくれる筈よ...さあ、あなた...そろそろ」
「ああ、...さあ十四郎行っておいで。必ず生きて...生きて平和な世の中で幸せに暮らしてくれ」
「愛してるわ...ずっと愛してる」

...なんだ。これは一体なんなんだ──。
あの二人には俺の姿は見えていないのか──

十四郎と名付けられている赤ん坊は青い光に包まれながら空に消えていった。

そして俺の足もだんだんと薄れていく
これは俺が作り出している妄想なのか...。
あんた達は...何者なんだ。

そう考えている内に、視界は暗くなっていった。
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