夕闇は道たづたづし 上
「山崎、煙草」
「...はいはい」
ずっとこの調子だ。
思う存分外に出られない分、俺に煙草を買ってこさせる。
「——それで、見つかったか?」
「それが、一人目撃者がいたらしくて詳しく聞いてみたところ...人間の力ではない天人のような力で人を殺めていたそうです」
「?...天人のような...?」
「はい。つまり、人間の形をした天人ではないかと」
「!...万事屋の、チャイナみたいなやつってわけか」
「おそらく——でも、人間の形をした天人なんて俺の知識では夜兎族以外には思いつきません。もしかしたら犯行は夜兎族である可能性が高いです。」
おそらく、の話だが。
しかし犯行が本当に夜兎であれば見つけられるのは困難だろう。
「...山崎、至急港で仕事して来い」
「了解です」
「幾ら天人でも船が無ないと地球には来れねぇ...そう難しい事じゃねぇよ。何か動きがあれば知らせろ。……万が一見つかったら直ぐに電話を寄越せ。いいな?」
「分かりました...。?副長、その腕どうされたんですか」
「!...何でもねぇよ。いいから行ってこい」
「あ、はい」
副長の、今の顔は何だ...
少しの疑問があったが久々の緊急命令に張り切っていた俺はその疑問をすぐに捨てることになった。
あの時気づいていれば護れるモノがあったというのに。