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第一章

ガ「あなたと言う人はッ!捕虜を連れ出すとは何をお考えかっ!」

椅子から立ち上がりガルファが言った。

ある意味、予測どおり。

何となくクレナイはガルファが怒鳴ってくる予想はしていた。

ヒ「まぁまぁ、ガルファさん。きっと大丈夫ですよ。」 


アー「そーだよ。クレナイが連れてきたんだから!信頼出来るって!」

ガ「貴様らが甘いから、クレナイ副騎士長の甘言が通ってしまうのだ…」

アーサー達がフォローの声を入れるが怒り心頭というようで未だクレナイを睨みつける。

すると、

魔「それにたかだか数人の獣人ビーストラーにやられる我等ではあるまい、違うか?ガルファ一軍補佐。それとも、ガルファ一軍補佐ともあろう人間はその数人が…怖いのか?」

魔理沙はあざ笑うかのごとくガルファに投げかける。

ガ「そんなわけがあるか!!」

ガルファはそう声を荒げると荒々しく席に着きフンと鼻をならす。

ジ「…それで、どうするつもりだ。」

ジンに問われてクレナイは先程聞いた彼らの国の現状について話した。

ガ「だから、なんだというのです?
第一、獣人族ビーストラーとは不可侵の条約を結んでいます。こちらから首を突っ込む訳にはいきません。」

ガルファはさも、当然です、と言う顔でクレナイを見るが

ク「…いや、突っ込むよ?」

帰ってきた言葉はガルファの頭からブチッと何かがちぎれた音を鳴らせるものだった。

ワナワナとガルファは怒りで体を震えさせている。

ル「…困ってる人、助けちゃいけないの?」

ルシェル姫がふと口を開いた。

ガ「ひ、姫様?」

ル「困ってる人は助けないとダメってお父様が言ってたよ?」

純粋な疑問、ガルファもついあっけとられた。

ル「…助けちゃ、ダメ?」

うるっと目を輝かせて上目づかいでルシェル姫は言う。

ダ「ダメじゃねぇーよ、姫様。ガルファさんは心配性なんだよ。困ってる奴を助けちゃいけないわけがない!」

そうだよね!とルシェル姫は嬉しそうだ。

姫に言われては何も言えなくなってしまったガルファ。

そこに追い打ちをかけるかのようにジンは話す。

ジ「…ガルファ、お前が懸念することも分かる。しかし、獣人族ビーストラーが内戦など起こしてはこちらにも戦火が飛ぶかも知れない。分かってくれるか?」

憧れの人にまでそう言われてはガルファも、ハイ、というしかなかった。


ク「よし!じゃあ、獣人族ビーストラーの内戦に首を突っ込むことに異論ある人は?」

誰も手は上がらなかった。

ア「…決まりだな。」


グ「ほんっどうに良いのか?俺だちを…助けてぐれる…のか?」

グルレが肩を震わせて泣きながら聞く。

ク「勿論ですよ!」

グ「ありがどう!!」

もう消えかかった希望に再び火がついたように、

もしかしたらこの無益な戦いが終わるかも知れない。

同胞も助かるかも知れない。

グルレたちはそう思った。





魔「…とりあえず、軍の手配か。」

ク「一軍だけでもいいかな?」

あぁ、と魔理沙は頷く。

アー「じゃあ、一軍の皆に言ってくるね!」

アーサーはまるでピクニックにでもいくかのようにワクワクした顔で駆けていく。

ア「僕は作戦たてくるね、クレナイ!」

ク「お願い、兄さん。」

アッシャーも資料やら何やらすでに準備していた束をもち自身の執務室へと向かった。

ク「まぁ、話してくるだけですし。ジンさんとガルファさんと三軍さんはこっちにいてもらって良いですか?」

ジ「分かった。何かあったら呼べ。」

クレナイはりょーかいです、と返して獣人族ビーストラー達のほうに振りかえる。

ク「うーん。今はグルレさんたちは捕虜ってことになってますが、とりあえず部屋を用意して貰いますね。軍の状況が整い次第出発します。」

グ「…何から何まで済まない。」

グルレはずずっと鼻水を啜り布きれのような袖で涙を拭いた。

ク「良いんですよ。」

あ、とクレナイは小さく声をもらした。

ク「…タイターは?」

ふと、この場にいなければならない人物を思いだし、今更ながらにダンに問う。

ダ「確か、試したい薬の実験があるとかでまた、研究室に籠もってるらしいぜ。」

クレナイの後ろで「三軍副騎士長ともあろう男が…」と黒いオーラを放ちながら漏らす。

ク「ちょっとタイターの所行ってくるね。」

クレナイは彼、を呼ぶために踵を返し城の裏庭へと足を進めた。
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