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第一章

城の裏口から広がる野原にクレナイは出た。

裏口から続く石畳の一本道は古びた塔へと向かっていて、クレナイは沿うように歩く。

古びた塔は『不気味の塔』と呼ばれ国の子どもたちの心霊スポットとにも出来ないと恐れられている。

コンコンとクレナイは木製の戸を叩き

ク「タイター!ガルファさんが会議に出てないこと怒ってたよ!」

中からドサドサ、ガダッ!バリーンッ!

けたたましいくらいの音が聞こえたのち、カチリと扉が開いた。

?「いてて、頭を打ってしまったよ…」

頭をさすりながら金髪の青年が出てきた。

ク「タイター、大丈夫?」

クレナイは腰のベルトに常備している回復魔法道具キュアアミュレストを取り出し、タイターの頭に当てた。

そして、癒えよヒールと唱えると青い光がタイターを照らす。

タ「ふぅ…ありがとうクレナイ。いやぁ、ビックリしてしまったよ。中々来客なんてないものだからね。」

そう言いながらクレナイを中に招き入れながら話す青年はタイター・フィクサー。

クレナイたちよりも年上で第三軍騎士長をしている。

希少な記憶魔法の使い手だが、低血圧で貧血なので彼の家兼研究室の、この塔に籠もることが多い。

クレナイたちが見習いの頃からの付き合いで兄のような存在である。

ク「会議ぐらいでないと。」

タ「そうだね。あまり、ガルファさんに怒られたくはないし…いい加減出勤しないと。」

椅子にすわるように薦めながら、そういえば、と続け

タ「今日は何のために来てくれたんだい?」

入れたお茶を差し出しながら首を傾げる。

ク「あ、それはね。手紙がきてると思うけど…例の獣人族ビーストラーのことなの。」

クレナイは先程、全会一致で決まったことをタイターに説明した。

タ「なるほど、それでその会議にいなかった僕をガルファさんは怒っているのか…」

顎に手を当てて、うーんと唸った。

ク「タイターたちにはね、一軍がいない間のことを任せようかと思って。」

タ「そっか、分かったよ!クレナイたちが全力で頑張れるように僕たちは応援するだけだから!」


ありがとう、とクレナイは微笑んで、席を立つ。

タイターは急いで仕事着のローブを羽織り、試作品の魔法道具をリュックに詰めて既に外にいるクレナイの元まで走っていった。
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