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ショートショート

僕の母さんが海底都市へ行ったのは一年も前の話だった。
難病から奇跡的に生還できた僕を待っている人はいなくなってしまった。消えた母を恨んだが、同時に会いたくもあった。
無理をしてバイトでお金を稼ぎ、僕は海底列車の駅へと向かった。
「海底都市へ行く切符をください」
駅員は僕の身なりをジロジロ見るなり、
「どうして行きたいんだい」
と、気鬱そうに言った。
「1年前、母が海底都市へ行って帰ってこないんです」
途端に、駅員の目は哀れむものになった。
「ならば、もう生きてはいないよ」
思わず固まる僕に、駅員は続けた。
「海底都市は、臓器を売りに行くか、買いに行く場所なのさ」
高額な治療費の出所を理解した僕は、その場に膝から崩れ落ちた。
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