短い童話風な話
湿った風が頬を撫でた。嵐が近い。
僕は家の窓という窓を閉めると、鎧戸も閉め、さらには外から板を打ち付けた。これで大丈夫だろう。
ただ一箇所、家の二階の角部屋にある窓は、昔曽祖父が潜水艦乗りだった頃、破壊された潜水艦の唯一無事だった窓を持ってきたとかで、通常より遥かに堅牢なガラスゆえに鎧戸も補強もしなかった。
やがて、びゅうびゅうと風が吹く。誰かが家に体当たりをしてるんじゃないかというくらい激しい風で、家が地震のように揺れている。
僕は怖いもの見たさで、二階の窓から外を見た。
外は荒れ狂っていた。
木々は普段とは桁違いにしなり、折れた枝はふわりふわりと空を待っている。近所の家の屋根は剥がれてきていて、まるで紙のようにペラペラとめくれ、今にも剥がれそうだ。物という物が飛んでいて、家から出たらあっという間に何かに当たってしまいそうだった。
と、僕は目を剥いた。荒れ狂う風の中、一人の少女が飛んできたのだ!
「なんてこった!」
僕はヘルメットを被ると、大急ぎで家を飛び出した。
「おおい、君! 大丈夫か?! 建物の中に避難しなさい!」
強い風に、まともに立っていられない。
少女はなにかを言っていたが、とてもじゃないご風のせいで聞こえなかった。
僕は少女を抱え上げると、一目散に家へと走った。
なんとか二人で家の中に入ると、僕はドアを閉める。まるでドアの向こうで誰かがドアを抑えているんじゃないかというくらい抵抗があったが、なんとか閉め終える。
「君、大丈夫かい?」
改めて少女に声をかける。少女はぼんやりとしていた。
「君はどこから来たの?」
「遠くから」
少女は閉まった扉を振り返った。
「私たちは嵐にと共に移動していたんですが、うまく風に乗れなくて落ちてしまいました。たまにあるんです」
「風に乗って?」
僕が思わず問い返すと、少女は頷いた。
「姉さんたちはまだ上手いこと風に乗ってるみたいです。もうすぐ行ってしまう」
「追いかけるつもりかい?」
「いいえ」
「そうだね、今は危険だ。そのうち嵐も収まるだろう。それから追いかけてもきっと追いつけるさ」
「いいえ、追いかけません。私たちは風に乗って移動する種族。でも、風から落ちた時、その土地に住むんです」
そして、少女はにこりと笑う。
「貴方のように、親切な方がいる土地に」
僕は家の窓という窓を閉めると、鎧戸も閉め、さらには外から板を打ち付けた。これで大丈夫だろう。
ただ一箇所、家の二階の角部屋にある窓は、昔曽祖父が潜水艦乗りだった頃、破壊された潜水艦の唯一無事だった窓を持ってきたとかで、通常より遥かに堅牢なガラスゆえに鎧戸も補強もしなかった。
やがて、びゅうびゅうと風が吹く。誰かが家に体当たりをしてるんじゃないかというくらい激しい風で、家が地震のように揺れている。
僕は怖いもの見たさで、二階の窓から外を見た。
外は荒れ狂っていた。
木々は普段とは桁違いにしなり、折れた枝はふわりふわりと空を待っている。近所の家の屋根は剥がれてきていて、まるで紙のようにペラペラとめくれ、今にも剥がれそうだ。物という物が飛んでいて、家から出たらあっという間に何かに当たってしまいそうだった。
と、僕は目を剥いた。荒れ狂う風の中、一人の少女が飛んできたのだ!
「なんてこった!」
僕はヘルメットを被ると、大急ぎで家を飛び出した。
「おおい、君! 大丈夫か?! 建物の中に避難しなさい!」
強い風に、まともに立っていられない。
少女はなにかを言っていたが、とてもじゃないご風のせいで聞こえなかった。
僕は少女を抱え上げると、一目散に家へと走った。
なんとか二人で家の中に入ると、僕はドアを閉める。まるでドアの向こうで誰かがドアを抑えているんじゃないかというくらい抵抗があったが、なんとか閉め終える。
「君、大丈夫かい?」
改めて少女に声をかける。少女はぼんやりとしていた。
「君はどこから来たの?」
「遠くから」
少女は閉まった扉を振り返った。
「私たちは嵐にと共に移動していたんですが、うまく風に乗れなくて落ちてしまいました。たまにあるんです」
「風に乗って?」
僕が思わず問い返すと、少女は頷いた。
「姉さんたちはまだ上手いこと風に乗ってるみたいです。もうすぐ行ってしまう」
「追いかけるつもりかい?」
「いいえ」
「そうだね、今は危険だ。そのうち嵐も収まるだろう。それから追いかけてもきっと追いつけるさ」
「いいえ、追いかけません。私たちは風に乗って移動する種族。でも、風から落ちた時、その土地に住むんです」
そして、少女はにこりと笑う。
「貴方のように、親切な方がいる土地に」