あるところに美しいお姫様がしました。
彼女に一目惚れした王子様は、どうにかして彼女と結ばれたいと思いました。しかし、お姫様はさほど王子様に興味がないようでした。
「どうしたら僕を好きになってくれますか？」
お姫様は少し考えてから言いました。
「私を幸せにしてくれたら」
そう言うと、しばらく王子様の顔を見て、プイッと顔を逸らして去って行きました。
王子様は考えます。どうしたらお姫様を幸せに出来るでしょうか。何が幸せなのでしょうか。
母である王妃様に聞きました。
「王子が賢く良き王になることでしょう」
乳母に聞きました。
「王子が健やかに育たれることでしょう」
侍女に聞きました。
「王子が優しく愛の言葉を囁くことでしょう」
下女に聞きました。
「豊かな暮らしを与えることでしょう」

そういう具合に、色んな女性に聞いて、王子様は王女様の元へ向かいました。
「僕は貴女のために、賢君となるべく努力いたします。愛しい貴女と末永く、何不自由ない生活が送れるようにしましょう。貴女が幸せに暮らせるように」
さらに続けようとした王子様に、お姫様はため息をついて言いました。
「私を幸せにしたいと言いながら、私の幸せが何か聞こうともしないのですね。他の方の意見は聞き入れ、私を理解しようとともしないのですね」
お姫様は悲しげに言うと、そのまま王子様の前から去ってしまいましたとさ。